彼氏かもしれない僕の彼女について

ぱんなこった。

文字の大きさ
上 下
12 / 17
2

彼女のこと⑦

しおりを挟む

 全力で走り、花野くんの家に辿り着きました。ぜえぜえと早い呼吸を落ち着かせて汗を拭い、ドアの前に立ちます。恐る恐る呼び鈴を押すと、「ピンポーン」という軽い音が響きました。走ったせいか緊張しているせいか、心臓のバクバクが治まりません。

「はーい」

 すると中から男の人の声が聞こえ、鍵が開く音が聞こえました。でも、僕は少し違和感を感じています。

《今の声…少し低いです。花野くんじゃないような…?》

 扉がゆっくり開き、顔をにょきっと出した人物はやはり。花野くんではありません。

「お主はどなたでござる…アッ!!ゴホゴホ!」
「えっ」
「あっ」

《ござ…る?今、ござるって聞こえたような…》

 その人は僕より背が高く、寝癖のついたくせ毛を手で抑えながらダボッとしたTシャツを着ています。慌ててズレたメガネを整えて僕をじっと下から上まで見つめてきました。

「あーえっと、すみません。どちら様ですか?」
「…あ!!え、あ、あの!こんにちは!僕、こちらに住んでる花野枇杷さんの…ゆ、友人?で…」

《あれ、普通の口調です。さっきのは幻聴だったのでしょうか…?》

「へぇー、こんにちは。枇杷の友達?今あいつ居なくて…あ!俺は兄の宙斗そらとです」

 そういえば…お見舞いに来た時、社会人のお兄さんがいるって言ってました。この人なんですね。身長は大きいしパッと見はあまり花野くんに似てませんけど、どこか雰囲気はやはり似ています。

「あ、は、初めまして!!今宮永詩こんみやえいしといいます!花野くんは…どこに行ったか分かりませんかね…」
「学校からまだ帰ってきてないから、どっか遊びにでも行ってるんじゃないかな?急ぎ?電話しようか?」
「あ!!いえ、大丈夫です!僕からまた連絡してみます、ありがとうございます!失礼します」

 深々とお辞儀をして去ろうとすると、「あ、ちょっと待って!」とお兄さんに止められました。

「え…?」
「君、お名前えいしくん…?だっけ。どういう字書くの?」
「え、あ、永遠の永に、詩を書くの詩です…」
「……ほーん、そう!いい名前!弟をよろしくね、じゃ!」
「あ、は、はい!」

《急に名前の字を聞かれるとは…びっくりしました。それよりも!家にいないとなると、まだ学校にいるんでしょうか…》

 僕はまた走り出して、花野くんの学校に戻ることにしました。また電話をかけてみるけど、呼出音が鳴るだけで出てくれません。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

泣き虫な俺と泣かせたいお前

ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。 アパートも隣同士で同じ大学に通っている。 直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。 そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした

月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。 人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。 高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。 一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。 はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。 次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。 ――僕は、敦貴が好きなんだ。 自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。 エブリスタ様にも掲載しています(完結済) エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位 ◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。 応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。 ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。 『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748

俺の幼馴染はストーカー

凪玖海くみ
BL
佐々木昴と鳴海律は、幼い頃からの付き合いである幼馴染。 それは高校生となった今でも律は昴のそばにいることを当たり前のように思っているが、その「距離の近さ」に昴は少しだけ戸惑いを覚えていた。 そんなある日、律の“本音”に触れた昴は、彼との関係を見つめ直さざるを得なくなる。 幼馴染として築き上げた関係は、やがて新たな形へと変わり始め――。 友情と独占欲、戸惑いと気づきの間で揺れる二人の青春ストーリー。

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

「誕生日前日に世界が始まる」

悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です) 凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^ ほっこり読んでいただけたら♡ 幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡ →書きたくなって番外編に少し続けました。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】 12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。 近況ボードをご覧下さい。

処理中です...