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まさかじゃない

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夏希が歩み去ってから、校舎へ振り返った那月。後ろを見た瞬間、「わっ」と声を上げた。そこには相野が立っていたからだ。

「あ、相野くん…。びっくりした…、どうしたの?」
「自販機行った後にたまたま見かけて…。今話してたヤツって…この前那月くんを襲ってきた人でしょ?」
「あっ、う、うん」
「大丈夫だったの?何でまたあの人が…」
「も、もう大丈夫だよ!この前のこと謝ってくれたんだ」
「でも…!」
「ま、前とは少し変わったみたいだったんだ…。僕のことは相変わらず嫌いみたいだけど…夏希さんは、きっともうあんなことしないと思う」
「……そっか」

少し俯いた相野は、何か言いたげな険しい表情をしている。那月は不思議に思い顔を覗き込んだ。

「あの…どうし…」
「那月くん!俺……っ実は」
「!!う、うん」

思い切って声を出したように思えた相野だが、また口を閉ざして「なんでもない、ごめん」と呟いた。その顔が息苦しそうにも見えて、那月は心配そうに眉を下げる。

「…何も無くてよかった。明日夏夜行祭だし、せっかくなら楽しみたいもんね」
「え、あ…」
「じゃあ俺先戻るね!」

そう言って相野は走って行った。その背中を見届けて、那月はさっきの相野の顔を思い出す。あの不確かな可能性がどんどん確証に近づいていく感覚がした。

「…何か言いたそうな感じだったな」

ずっと「まさか」とは思っていたが、さっきの様子を見るとまさかではない気がしてきた。

「蓮…くん」

それでも、明日は夏夜行祭。彩世に話をすると決めている。

自分も前に進むため。これ以上過去のことを引きずらないためにも、この時那月はもう1つある決意をした。

一一一……そして、夏夜行祭当日。
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