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なんで
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駅の方へ走っていた那月は、道の途中で足を止めた。彩世が立ち止まって辺りを見回していたからだ。
「先輩!!」
「えっ、ナツくん!?なんで来たの!」
「あ、あの、夏希さんは…」
「ダメだって、学校に戻ってて!」
「だ、大丈夫です!!僕も…僕も、守られてばかりじゃ…!」
「…っナツくん。気持ちは分かるけど…さっきも危なかったんだよ。それに夏希も見当たらないんだ」
「えっ…!?」
「駅の方に走っていくのは見えたんだけど、ここの角を曲がったらいなくて…」
那月達がいる場所は最寄り駅と学校のちょうど中間の位置。曲がり角が多い道で、駅と反対側の大通りに出ると広い交差点が行き交っている。
一一一ここを真っ直ぐ行ったら最寄りだから、このまま走って行ったなら見失うはずないのに…。どこかで違う道に入ったのかな。
「ナツくん、とりあえず学校に戻ってて…」
「先輩!!あっ、あの!傷口にこのティッシュを当てて抑えててください!僕あっちを見てきます!」
「え!?ちょっと!!」
那月はポケットに丁寧に入れていたティッシュを慌てて彩世に手渡し、駅と反対方向へ走り出した。
後を追ってきた相野も、戸惑いながら那月の行く方へと走り抜けていく。
「那月くん!待って…!」
一一一真っ直ぐ向かってないってことは…反対方向へ行ったのかも!この辺で大通りはあそこしかないし、交差点もある…!
一一一僕も自分が独りだって思って、塞ぎ込んでた時もあったし、もう消えてしまいたいって思った時もあった。そんな限界が来た時、僕が夏希さんの立場だったら…。
「はぁ、はぁ…、あっ!?」
一一一やっぱり…!いた!!あそこだ!
必死に走り続けて大通りへ出た時。那月の予想通り、車が行き交う交差点の前にフラフラと歩いている夏希の背中があった。
交差点は赤信号でたくさんの車が行き交っているが、夏希は足を止めずにゆっくりと横断歩道へ向かっていく。
「え!!ちょ、ちょっと!!」
もう周りも見えていななさそうに彷徨っている夏希は、音も声も聞こえていないようだ。
そして赤信号の横断歩道に踏み出した。
「夏希さん!!!」
車を運転している人も、まさか今人が出てくるとは思わないだろう。車道を走ってきた大型車は、夏希を見つけて咄嗟に激しくクラクションを鳴らすが、ブレーキも間に合わない。
一一一ダメだ!そんなの、このままなんて…!
「…っ!?うっ」
体を車道に投げ出したはずの夏希。だが一瞬で意識とは真逆に歩道側に倒れ込んでいた。
その尻餅をついた夏希の横腹には、那月が手を回して覆い被さっている。
「あぶねーだろ!!何考えてんだよ!」
それと同時に、間一髪で夏希を轢きそうだった車の運転手が窓から声を荒らげた。クラクションも何台からか鳴らされ道路中にけたたましく響く。
「…っはぁーーはぁ一一、危なかった…」
「…いっ、て、」
「先輩!!」
「えっ、ナツくん!?なんで来たの!」
「あ、あの、夏希さんは…」
「ダメだって、学校に戻ってて!」
「だ、大丈夫です!!僕も…僕も、守られてばかりじゃ…!」
「…っナツくん。気持ちは分かるけど…さっきも危なかったんだよ。それに夏希も見当たらないんだ」
「えっ…!?」
「駅の方に走っていくのは見えたんだけど、ここの角を曲がったらいなくて…」
那月達がいる場所は最寄り駅と学校のちょうど中間の位置。曲がり角が多い道で、駅と反対側の大通りに出ると広い交差点が行き交っている。
一一一ここを真っ直ぐ行ったら最寄りだから、このまま走って行ったなら見失うはずないのに…。どこかで違う道に入ったのかな。
「ナツくん、とりあえず学校に戻ってて…」
「先輩!!あっ、あの!傷口にこのティッシュを当てて抑えててください!僕あっちを見てきます!」
「え!?ちょっと!!」
那月はポケットに丁寧に入れていたティッシュを慌てて彩世に手渡し、駅と反対方向へ走り出した。
後を追ってきた相野も、戸惑いながら那月の行く方へと走り抜けていく。
「那月くん!待って…!」
一一一真っ直ぐ向かってないってことは…反対方向へ行ったのかも!この辺で大通りはあそこしかないし、交差点もある…!
一一一僕も自分が独りだって思って、塞ぎ込んでた時もあったし、もう消えてしまいたいって思った時もあった。そんな限界が来た時、僕が夏希さんの立場だったら…。
「はぁ、はぁ…、あっ!?」
一一一やっぱり…!いた!!あそこだ!
必死に走り続けて大通りへ出た時。那月の予想通り、車が行き交う交差点の前にフラフラと歩いている夏希の背中があった。
交差点は赤信号でたくさんの車が行き交っているが、夏希は足を止めずにゆっくりと横断歩道へ向かっていく。
「え!!ちょ、ちょっと!!」
もう周りも見えていななさそうに彷徨っている夏希は、音も声も聞こえていないようだ。
そして赤信号の横断歩道に踏み出した。
「夏希さん!!!」
車を運転している人も、まさか今人が出てくるとは思わないだろう。車道を走ってきた大型車は、夏希を見つけて咄嗟に激しくクラクションを鳴らすが、ブレーキも間に合わない。
一一一ダメだ!そんなの、このままなんて…!
「…っ!?うっ」
体を車道に投げ出したはずの夏希。だが一瞬で意識とは真逆に歩道側に倒れ込んでいた。
その尻餅をついた夏希の横腹には、那月が手を回して覆い被さっている。
「あぶねーだろ!!何考えてんだよ!」
それと同時に、間一髪で夏希を轢きそうだった車の運転手が窓から声を荒らげた。クラクションも何台からか鳴らされ道路中にけたたましく響く。
「…っはぁーーはぁ一一、危なかった…」
「…いっ、て、」
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