早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。

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壊れそう

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「せ、先輩……」

一一一首触られてる…。いや、顔?境目?分かんないけど、先輩に触れられてる…!この前みたいに…。

彩世の眼差しは那月を見守るようなものとは違って、真っ直ぐ突き刺さる鋭いものだ。逃がさないと言わんばかりに那月の首に手を添えたまま。

「なつ…夏希はさ、俺に対して独占欲がすごいからって前も言ったっけ。なんでそんなに1人に執着できるのか今まで分からなかったけど…」

「…っは、はい」

「今分かった気がする」

「え…?」

「ナツくんが変われて、他の男子とも話せるようになってナツくんが嬉しそうで嬉しいはずなのに…。俺、素直に喜べなくて…嫌になるんだ」

「ど、どういうこと、ですか…?」

「もう男を克服できたら、俺はいらない…?俺より他の奴と一緒にいるようになる?もう俺にだけ頼ってくれなくなる…?」

一一一彩世先輩の手が震えてる…。目を伏せて唇を噛み締めてる。今までの僕と同じように…。

「…せ、先輩がいらなくなるなんて、有り得ないです!克服できても…ぼ、僕は先輩に会いたい!」
「ナツくん…」
「だっだから、寂しい顔してそんなこと言わないでください…」

那月は彩世の目を見上げてそう全力で伝えた。彩世は那月に触れていた手にぐっと力を入れ、そのまま自分の方に引き寄せる。

「えっ……」

風に乗るように動いた那月の体は、あっという間に彩世の腕の中に収められてしまった。体を包む温かさと力強さに、だんだん状況を把握する那月。

一一一え?え?え…?これは、僕、先輩に抱きしめられてる…?え、待って。なんで?なんで!?近い、どの時よりも先輩が近い…!!!

「う、あ、あの……」
「…っごめん」
「……せんぱっ、い」
「すごい嫌だ…」

那月の細い体を力強く抱きしめる彩世は、顔を那月の首元に埋める。心臓を跳ね上げながらも全く動くことのできない那月は、ただ顔を赤くさせて彩世のされるがまま。

一一一や、や、やばい!!!絶対心臓の音、先輩に聞こえてる…!!バクバクしてるの止まらない。どうしよう、動きたいのに逃げられない…!

「…こんなに近いと俺が怖い?」
「へ!??い、いや…こ、怖くは…ないですけど…バクバクして心臓、やばいので、は、離して、くださ」
「…やだ」
「えっ…!?」
「また震えてるし、耳まで真っ赤になってる」
「ひっ…!!い、息がくすぐったい、です!!」

一一一ダメだ、こんなの頭おかしくなる…!!ていうか、腰抜けそう…。

「そっか…、あいつもこんな気持ちだったんだ」
「へ…?あ、あの、なんて、」
「ううん。怖かったら言って」
「え…わっ!?」

首元に顔を埋めていた彩世は、そのまま顔を上げて那月の首筋に唇を添わせる。唇が首につく度に、那月の体はビクッと大きく跳ね上がった。

「いやっ、あ、あの!待っ…これ、き、キス…!?」
「うん…」
「せ、先輩…!ちょちょ、あの!!あっ…!?」
「……っ」
「あ一一…!せ、せんぱぃ…!」

そして首筋から耳にまで唇が触れた時、那月の限界がきたようだった。

「っ…ぅ、ぁっ…!」

ガクッと膝の力が抜け、ずるずると彩世にもたれながら地面へとへたり込んでいく。荒い呼吸を繰り返しながら口元を抑えて、彩世を見上げた。

「はぁ、はぁ…、せんぱ…っ、なんで、こんな」
「…っごめん、限界だった」
「へ…、」
「独占欲が爆発したみたい、夏希のこと言えないね」
「どっ…!?」
「ちょっと…しばらくここには来ないようにする。頭冷やすよ、ごめんね」
「え…、先輩…!?」

腰が抜けた那月は立ち上がれず、歩き去っていく彩世を追いかけることができなかった。そしてなにより、今起きたことで頭がいっぱいになっているため心の整理が追いついていない。

一一一今、先輩に抱きしめられて…、え?なんで首に、キス…。耳に…!?え?え?独占欲って?僕に対してってこと…!?

「…っやばい、どうしよ、これ」
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