早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。

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突然の異変

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あれから那月は弁当を何とか食べ終え、教室へと戻った。彩世にメッセージを送ろうかとも考え携帯を開いたが、文字を打って消しての繰り返しで言葉がまとまらない。そうこうしているうちに昼休みは終わり、午後の授業に突入してしまった。

一一一はぁ、一体僕はどうしちゃったんだ…。

「……ん?」

そして教科書とノートを開いている時、ふと斜め前から視線を感じ目線を上げる。

「!!」

視線を感じた方を見るとやはり。那月の斜め前の席にいる相野が頬杖をつきながらこちらを見ていた。目が合った那月はパチパチと瞬きを繰り返し、目線を机に戻す。

一一一な、なんだろう。相野くんめちゃくちゃこっちを見てるような…。僕を見てる訳じゃないのかな。でも今思い切り目が合ったし…。

もう一度ゆっくり顔を上げると、相野はもう前を向いているようだった。

一一一初めて会話をしてから、なぜか相野くんが視界によく入る…。あんな風に話しかけてもらったから、僕も気になってるのかな…。

その時、突然那月の携帯の画面がポケットで振動し始めた。先生がほか事をしている隙に恐る恐る携帯を取り出してみると、彩世からメッセージが届いているようだ。そこには「さっきはごめんね」とだけ書かれている。

一一一先輩…僕が悩んでる間に…。もしかしてずっと心配してくれたのかな。ていうか、どうしよう。さっきの光景を鮮明に思い出しちゃった…先輩にあーんをした時の…。

彩世に卵焼きを食べさせた時のことを思い出し、那月の顔はまた熱く火照る。ドクドクと鼓動も鳴り止まず、少し身震いもある。

一一一あ、あれ?なんかおかしい…。体が…なんだろう。さっきとは違う、明らかに変だ…。

「じゃあこのページを…篠井くん!お願いします」
「……へ」
「ってあれ?篠井くん?大丈夫?」

そして偶然先生に当てられた那月だが、なぜか頭がボーッとして視界もモヤがかかったみたいに見えづらい。ただ単にさっきのことを思い出しただけではないと感じるほどの異変。

「だ、大丈夫です……」
「うわ!顔赤いよ?もしかして熱ある?」
「えっ…」

先生のその言葉を聞いて、那月は自分のおでこに手を当てる。すると想像以上に熱く、頬も同じ体温になっていた。

一一一確かに顔が熱いだけじゃなくて、少し寒さもある…。頭もボーっとするしちょっと痛い。熱なのかな…。

「…す、すみません。あの、ほ、保健室に行っても、いいですか…」
「やっぱり!大丈夫?全然行っておいで。えーっと、じゃあ心配だし誰かに付いてってもらおう。誰か…」

先生がそう言って辺りを見回した時、明衣が即座に手を挙げて声を出そうとした。だがそれは発する前に他の生徒によって抑えられてしまった。

「先生!俺今日、日直だし連れて行きます」
「なっ…」

すぐにそう言って手を挙げたのは相野だ。周りは少しザワつき、接点の無さそうな2人に不思議そうな目を向ける。

「あー相野くん!じゃあお願いしようかな」
「いや、先生!私が…」
「真田さんもありがとね。でも付き添いは1人で大丈夫だから。あんまり多いと騒がしくなるし授業中だからね」
「…っでも」
「それに男の子の方が力あって支えられるし大丈夫よ!じゃあ相野くんお願いね。保健室に連れて行ったらちゃんと戻ってくること」
「はい」

那月は体と顔の熱さ、頭の痛さと寒さで思考が定まっていない。相野の肩に腕を回され体を支えられたが、意識がぼやけているおかげで体がそこまで拒否を示していないようだ。

明衣はそれを見てぐっと堪え、先生に促されるまま席へ腰を下ろした。

「相野って、ああいうの率先してやるんだ」
「俺も初めて見た」
「てか真田ってなんでそんな篠井に必死なわけー?もしかしてデキてんの?お前ら」
「あぁ!?デキてねーわ!那月は大事な友達なの!心配なの!」
「ァ…スイマセン…」
「確かに篠井辛そうだったな、大丈夫かな」

クラスがザワザワとし始めた所で、那月は相野に支えられ教室を出た。まだ歩ける体力はあるものの、やはり支えられないと足元は不安定だ。

那月より少し背の高い相野は、体つきもガッシリしていて那月がもたれかかっても平気な様子。

いくら背の高い明衣でも女子なことに変わりはないから、同年代で背丈が同じ男子が脱力してしまったら上手く支えられなかっただろう。

「篠井くん、大丈夫?」
「…あ、、う、うん、ごめ、んね」
「全然いいよ。すぐ保健室連れて行くね」

だんだん呼吸が荒くなってきた那月を気にかけながら腰を支え、相野は保健室へと歩き進めた。
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