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何をしに

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ーーー今日の昼は、先輩いるかな。

あれから時間が経ち昼休憩。1人弁当を抱え中庭にやって来た那月。今となっては、彩世がいるかどうかを当たり前に気にするようになっている。周りを気にしながら中へ入るが、誰かいる気配はないようだ。

「……いなかった」

那月は肩を落としてベンチへ座った。ざわざわと葉が揺れるほど風が吹いているが、さすがに6月なのもあり外は暑くなってきた。木の影のおかげで、まだ中庭はマシな方かもしれない。

「ん……?」

そして弁当を開けようとした時、突然那月の目の前の草がガサガサと激しく揺れた。それと共に草に覆われていたフェンスがガチャガチャと揺れる音も聞こえてくる。

明らかに、外から何者かが揺らしているような音だ。

一一一なに!?なになに!?めちゃくちゃ葉っぱ揺れてる!なんか向こう側でフェンス登ってきてる!?猫!?犬!?

「ひぃ…!!!」

突然の事態に、那月は弁当を抱えて後退りをする。そしてガシャンッと音を立ててフェンスが激しく揺れると、その登ってきていた何かが顔を出した。

「うわぁ!!」
「あ!!やっぱりここが中庭かー」
「…へ?」

フェンスを登ってきたであろうその何かは、猫でも犬でもなく人だ。それもその人は、那月が見た事のある男の顔。

「ん?いろはいないなぁ。あれ…?ていうか、そこの君って、もしかして…」
「…っあ、あ、あなたは、えっと、この前の…」
「あー!そうだ!この前、学校の前でぶつかった人!」

那月を指差しでそう言った彼は、あの時の金髪でピアスをたくさんつけた彩世の幼なじみ、「なつ」だった。

なぜフェンスを登ってきたのかは分からないが、とりあえず彩世の幼なじみだと気付いた那月は、呼吸を落ち着かせた。

「……っあ、あの、何を、しに…何をしてるんですか?」

夏希はフェンスに掴まったまま、那月をじーっと舐めるように見て入ってこようとはしない。那月が声をかけると、その問いかけに「ああ」と気が付いた。

「あのねー、背高くてちょっとくせっ毛の黒髪の…真面目そうな男子生徒って来てないー?」
「えっ…」
「幼なじみがここ通っててさー、3年生なんだけどー、学校抜けて会いに来ちゃったの!それで最近よく中庭行くって聞いたからー、とりあえずここ覗いてみたんだ」

一一一幼なじみ…もしかしなくても、よく考えなくても彩世先輩のことだ。学校抜けて会いに来た…って大丈夫なの?それ…。そんなに先輩に会いたいんだこの人…。

「…い、いや、今日ここには僕以外いない、みたいです」
「えーー、なんだー!いないのかぁ」

口を尖らせて拗ねる夏希はフェンスをよじ登り、中庭側へ足を踏み入れ、軽々とジャンプをして地面へ着地した。

「え、うわぁぁぁ!!!!」
「あっごめん、びっくりさせちゃった?俺夏希っていうんだけどー君は?あと何年生?」
「…っあ、え、な、那月です。い、1年生…」
「えー!1年!?俺と一緒!?しかも名前も似てるしすげー!!」

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