早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。

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ため息

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一段と彩世との距離が縮まったあの日から、やけに落ち着かない那月。普通に生活はできているが、どこかソワソワしていた。

「…那月、どうしたのあんた」
「え!?な、なにが」
「なんか最近いっつもソワソワしてるし」
「してないよ!?」
「してるよ?男を怖がってる時とは違うけど、なーんかやけに周りを気にしてるっていうか、ほか事考えてるっていうか?そんな感じ」
「なっ、なにそれ」

やはりその異変にいち早く気付いた明衣。那月の机に並べた自分のお菓子をつまみながら、那月の顔を凝視している。

「よくキョロキョロしてんのは、誰か探してんの?」
「…え?僕が?」
「うん」
「さ、探してないよ!?大体、いつもキョロキョロしてるなんてそんなこと…」
「してんだよ!」

那月は「ええ…」と頭を掻きながら苦笑いをした。もし無意識に誰かを探しているとしたら、誰をなんて心当たりは1人しかいないから。

「はぁ……」
「何、ため息ついて。どしたの」
「なんか、自分のことなのに頭が追いつかない……」
「…ほぉ?」
「だって、無意識で探してたりとか…見つけると緊張するとか、ずっと気になるとか…訳分かんないし」

机に突っ伏してそうぼやくと、明衣はニヤニヤ笑みを浮かべながら慰めるように那月の肩をポンポンと叩いた。

「うんうん、いいねぇ。悩め若者」
「何そのお年寄りみたいなセリフ……」

その時、廊下とは反対の方を向いて机に突っ伏していた那月は気付かなかった。今まさに廊下を3年生が数人通って行ったことに。

そこに、今まさに自分が無意識に探していた彩世がいたことに。

「……あ」
「彩世?どこ見てんの?」
「……いや」
「おっここ1年の教室じゃん。懐かしいなー、俺は隣のクラスだったわ」
「はぁ……」
「え、何?なんでため息?」
「前は全然、一緒にいるとこ見ても気にならなかったのに…なんか自分が意味わかんね」
「はぁぁ?なんのこと?」
「俺やばいのかな……」
「え?うん」
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