36 / 94
3
触れた手
しおりを挟む
中庭に入り、すぐにベンチに腰掛けて「ふぅ」と一息ついた那月。少し身を乗り上げて隣を見ると、木の影に人は居なさそうだ。
「……今日は、いないのかな」
ここへ来て気持ちが落ち着いたせいか、緊張が抜けたせいか。昨日の寝不足が顔を出し、ベンチの背もたれに身を乗せてすぐに那月のまぶたは重くなった。そしてウトウトと意識が徐々に遠ざかっていく。
ーーーやばい、頭がふわふわする。影にいると風が涼しくて気持ちいいなー……。色々考えてたし、ちょっと疲れたのかな。急に眠すぎる……。
あっという間に、那月はそのまま眠ってしまった。ここまで眠いのも、中庭で寝てしまうのも初めてだ。今までは眠くても、気が張ったように神経がピリピリしているようで学校で寝るなんてなかったのに。それだけ警戒心が解かれてきたということだろうか。
「……あ」
那月がスースー寝息を立てて眠ってしまった後、中庭に1人男が入ってきた。首を傾けて座っている那月を見つけ、ゆっくり足音を立てないように近づいていく。
「え、寝てる……?」
那月の寝顔を見て、小さな声でそう呟いた。珍しいものを見るような目で、まじまじとその寝顔を見下ろす男。気持ちよさそうに眠る那月の姿1つ1つを目に映している。
そして、風になびく那月の柔らかい茶髪を指で優しくすいた。
「そんな顔して寝るんだ、ナツくんは……」
男はそのまま那月の頭をそっと、触れるか触れないかギリギリのラインをゆっくりと撫でた。
「ん…」
すると眉毛をピクリと動かし、目を閉じたまま顔を動かした那月。それを見て、男は同じベンチの少し離れた所に座りこむ。
何かが触れた感覚がくすぐったかったのか、那月の意識がぼんやりと戻ってきたようだ。薄っすらと目を開き、目の焦点を合わせる。ふわふわしていた頭が冴えてきた。
ーーーなんだろう、何か…今何かが頭に触れたような……。柔らかい葉っぱが掠めていったみたいに優しかった……。
「…うぁ、やば、寝てた、?」
「んー」と声を出しながら伸びをした那月。あくびは止まらないが、少しの時間だけでも眠れたおかげで目が少しスッキリしている。
「おはよ、ナツくん」
「……えっ」
「ガチ寝してたね、寝不足?」
明らかにいつもの隣のベンチではない方から声が聞こえ、那月は勢いよく振り向いた。やはり、那月のすぐ後ろに背中を向けた状態で彩世が座っていた。
自分がいるベンチに、同じベンチに彩世がいる。那月はその状況を理解して、慌てて立ち上がった。
「!!い、彩世、、せんぱ……!え、あ、あああの、い、いつ、から」
「……今日は、いないのかな」
ここへ来て気持ちが落ち着いたせいか、緊張が抜けたせいか。昨日の寝不足が顔を出し、ベンチの背もたれに身を乗せてすぐに那月のまぶたは重くなった。そしてウトウトと意識が徐々に遠ざかっていく。
ーーーやばい、頭がふわふわする。影にいると風が涼しくて気持ちいいなー……。色々考えてたし、ちょっと疲れたのかな。急に眠すぎる……。
あっという間に、那月はそのまま眠ってしまった。ここまで眠いのも、中庭で寝てしまうのも初めてだ。今までは眠くても、気が張ったように神経がピリピリしているようで学校で寝るなんてなかったのに。それだけ警戒心が解かれてきたということだろうか。
「……あ」
那月がスースー寝息を立てて眠ってしまった後、中庭に1人男が入ってきた。首を傾けて座っている那月を見つけ、ゆっくり足音を立てないように近づいていく。
「え、寝てる……?」
那月の寝顔を見て、小さな声でそう呟いた。珍しいものを見るような目で、まじまじとその寝顔を見下ろす男。気持ちよさそうに眠る那月の姿1つ1つを目に映している。
そして、風になびく那月の柔らかい茶髪を指で優しくすいた。
「そんな顔して寝るんだ、ナツくんは……」
男はそのまま那月の頭をそっと、触れるか触れないかギリギリのラインをゆっくりと撫でた。
「ん…」
すると眉毛をピクリと動かし、目を閉じたまま顔を動かした那月。それを見て、男は同じベンチの少し離れた所に座りこむ。
何かが触れた感覚がくすぐったかったのか、那月の意識がぼんやりと戻ってきたようだ。薄っすらと目を開き、目の焦点を合わせる。ふわふわしていた頭が冴えてきた。
ーーーなんだろう、何か…今何かが頭に触れたような……。柔らかい葉っぱが掠めていったみたいに優しかった……。
「…うぁ、やば、寝てた、?」
「んー」と声を出しながら伸びをした那月。あくびは止まらないが、少しの時間だけでも眠れたおかげで目が少しスッキリしている。
「おはよ、ナツくん」
「……えっ」
「ガチ寝してたね、寝不足?」
明らかにいつもの隣のベンチではない方から声が聞こえ、那月は勢いよく振り向いた。やはり、那月のすぐ後ろに背中を向けた状態で彩世が座っていた。
自分がいるベンチに、同じベンチに彩世がいる。那月はその状況を理解して、慌てて立ち上がった。
「!!い、彩世、、せんぱ……!え、あ、あああの、い、いつ、から」
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。



怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる