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諦め
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「てか4時間目が自習って最高じゃーん、暇だけど」
「明衣、落書きでノート埋まっちゃうよ?」
「いいの。数学のノートなんて絵で埋めてやる」
「僕の見せるから一緒にまとめようよ」
「いーやーだー」
もうほとんど自由時間のような4時間目の自習。携帯を触ったり寝たりしている生徒が多い中、那月は数学のノートをまとめ、明衣はその目の前で暇そうにノートに落書きをしていた。
周りの生徒も、先生に怒られない程度にざわざわしていて教室の中は今誰の話し声も目立たない喋りやすい雰囲気になっている。
そのせいもあり、那月は今まで聞いたことのないことを明衣に問いかけた。
「あのさ、明衣はさ。今まで彼氏いたことってあった…の?」
「え!?那月が恋バナしてくるなんて珍しい!なんかあった?」
「いやいや…別に、ただちょっと気になって」
「へぇー?んー、えっとね私は中2の時に1人付き合ってたよ」
「え!?中2で!?う、うそ。僕、知らなかったよ…?」
「だって那月とは基本恋バナとかしないしー、付き合ってたのも3ヶ月くらいですぐ別れたし別にいいかなーって」
「そ、そうだったんだ…」
そのまさかの回答に目を大きくしていると、明衣は頬杖をつきニヤリと口角を引き上げた。
「そんな話題が出るってことはー…?ほら、素直に話してごらん」
「え!?い、いやいや…本当に、あの、僕の耐性がないせいで…ってだけで、だから周りはどうなのかなって…あの。うん」
「はい?なにそれ?もしかして彩世先輩のこと?」
「いや!!?え、えっと…」
「ふふ、ごめんごめん。いじめちゃった。まあ何かあったならいつでも聞くよ?相手が女だろうが、男だろうが那月との恋バナは楽しみだしー?」
「こっ、恋バナって…!ち、違うよ!」
その時、タイミングがいいのか悪いのか授業の終わりを告げるチャイムが流れた。
「ふふふー?んじゃ、私行くね~?今日も中庭行ってくるでしょ?またあとでね~」
あわあわと口を開けて戸惑う那月に対し、何かを悟っているような微笑みを浮かべた明衣は、スキップをしながら席から去っていく。
「僕は…そんな、そ、そんなんじゃない…。男の人を怖くなくなりたいだけで…」
ぶつぶつと誰に対しての言い訳なのか。周りがガタガタと席を立ち動き始めた頃、熱い頬を手でひんやりと押さえて那月は購買に向かおうと教室を出た。
「……う、うわ、やっぱりすごい人」
そして1階の購買へ辿り着いた途端、目の前の人だかりに絶望を覚えている。男女問わず揉みくちゃになり、皆がパンやおにぎりを我先にと狙いにかかっている。もはやここは学生の戦場だ。
ゴクリと喉を鳴らし、その人だかりに入ろうと那月は足を進めた。この中に入って挑戦しようという勇気は確かにあった。
「焼きそばパン!!!早く行けよおら!詰めろよ!」
「売り切れるだろー!!押せ押せ!」
「ひぃ…っ!」
しかし、後から大群でやって来た柔道部の男子達に気押され勢いよく後退りをしてしまった。
ーーーどうしよう、やっぱり無理だ…。朝の電車以上に揉みくちゃだ。しかもみんなガタイがいいし、背も高い人多い…この中に入ったら気絶するかもしれない…。
購買では、主に食べ盛りである運動部の男子達が戦いを制しているので、他の生徒はその強さに基本的に負けている。そのため、いつも人気のメニューは早い段階で売り切れてしまう。今日も売り切れの札が続々とメニューに貼られていく。
「……今日はご飯、諦めよう」
那月はすぐ近くの自販機でコーヒー牛乳を買い、とぼとぼと中庭に向かった。
「明衣、落書きでノート埋まっちゃうよ?」
「いいの。数学のノートなんて絵で埋めてやる」
「僕の見せるから一緒にまとめようよ」
「いーやーだー」
もうほとんど自由時間のような4時間目の自習。携帯を触ったり寝たりしている生徒が多い中、那月は数学のノートをまとめ、明衣はその目の前で暇そうにノートに落書きをしていた。
周りの生徒も、先生に怒られない程度にざわざわしていて教室の中は今誰の話し声も目立たない喋りやすい雰囲気になっている。
そのせいもあり、那月は今まで聞いたことのないことを明衣に問いかけた。
「あのさ、明衣はさ。今まで彼氏いたことってあった…の?」
「え!?那月が恋バナしてくるなんて珍しい!なんかあった?」
「いやいや…別に、ただちょっと気になって」
「へぇー?んー、えっとね私は中2の時に1人付き合ってたよ」
「え!?中2で!?う、うそ。僕、知らなかったよ…?」
「だって那月とは基本恋バナとかしないしー、付き合ってたのも3ヶ月くらいですぐ別れたし別にいいかなーって」
「そ、そうだったんだ…」
そのまさかの回答に目を大きくしていると、明衣は頬杖をつきニヤリと口角を引き上げた。
「そんな話題が出るってことはー…?ほら、素直に話してごらん」
「え!?い、いやいや…本当に、あの、僕の耐性がないせいで…ってだけで、だから周りはどうなのかなって…あの。うん」
「はい?なにそれ?もしかして彩世先輩のこと?」
「いや!!?え、えっと…」
「ふふ、ごめんごめん。いじめちゃった。まあ何かあったならいつでも聞くよ?相手が女だろうが、男だろうが那月との恋バナは楽しみだしー?」
「こっ、恋バナって…!ち、違うよ!」
その時、タイミングがいいのか悪いのか授業の終わりを告げるチャイムが流れた。
「ふふふー?んじゃ、私行くね~?今日も中庭行ってくるでしょ?またあとでね~」
あわあわと口を開けて戸惑う那月に対し、何かを悟っているような微笑みを浮かべた明衣は、スキップをしながら席から去っていく。
「僕は…そんな、そ、そんなんじゃない…。男の人を怖くなくなりたいだけで…」
ぶつぶつと誰に対しての言い訳なのか。周りがガタガタと席を立ち動き始めた頃、熱い頬を手でひんやりと押さえて那月は購買に向かおうと教室を出た。
「……う、うわ、やっぱりすごい人」
そして1階の購買へ辿り着いた途端、目の前の人だかりに絶望を覚えている。男女問わず揉みくちゃになり、皆がパンやおにぎりを我先にと狙いにかかっている。もはやここは学生の戦場だ。
ゴクリと喉を鳴らし、その人だかりに入ろうと那月は足を進めた。この中に入って挑戦しようという勇気は確かにあった。
「焼きそばパン!!!早く行けよおら!詰めろよ!」
「売り切れるだろー!!押せ押せ!」
「ひぃ…っ!」
しかし、後から大群でやって来た柔道部の男子達に気押され勢いよく後退りをしてしまった。
ーーーどうしよう、やっぱり無理だ…。朝の電車以上に揉みくちゃだ。しかもみんなガタイがいいし、背も高い人多い…この中に入ったら気絶するかもしれない…。
購買では、主に食べ盛りである運動部の男子達が戦いを制しているので、他の生徒はその強さに基本的に負けている。そのため、いつも人気のメニューは早い段階で売り切れてしまう。今日も売り切れの札が続々とメニューに貼られていく。
「……今日はご飯、諦めよう」
那月はすぐ近くの自販機でコーヒー牛乳を買い、とぼとぼと中庭に向かった。
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