早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。

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変だ

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その日の夜、那月は上手く寝付けなかった。目を閉じてもあの光景が瞼の裏に映っている感覚がして何度も目を擦っていた。

12時、1時、2時、3時…。

布団の中で何十回寝返りを打っただろうか。気が付けば、時刻は朝の5時。さすがにそこから1時間ほどは眠れたが、いつもに比べれば圧倒的に睡眠不足だ。

「えっ、ちょっと那月大丈夫?すごい目赤いよ?」
「ああ、大丈夫大丈夫!少し寝るの遅くなっちゃっただけ…」
「もう…夜更かししてたの?気をつけてよ、ぼーっとして転ばないようにね?」
「うん!じゃあ行ってきます!」

朝、心配そうに見送ってくれた母に手を振り、家を出た那月。ここまでの寝不足は久しぶりで、頭がキンキンしている。

さすがに、先輩のあの光景を見たせいで眠れないとは言えない。これではまるで、子供が耐性のない大人のラブシーンを見てしまい脳裏に焼き付けたままじたばたしているようで、そんな自分が気恥しい。

「くっ…ふぁ…、ね、眠い…」

一一一もう本当に昨日から変だ、こんなの僕らしくない…。体と思考の制御が効かないみたいだ…。

何度もあくびを繰り返しながら駅へ向かうと、いつものように通勤通学ラッシュで混んでいる。

その中にはもちろん高校生も何人かいるわけで。よく見かける男女のカップルが今日も仲睦まじくホームに立っていた。指を絡めながら手を繋ぎ、体はぴたりと密着させている。

「…あ、」

一一一あれは、あの感じ。昨日の先輩と「なつ」って人みたいな繋ぎ方…あんな仲良さそうではなかったけど…、でも指を絡めて…ってまた何考えてるんだ、僕は。やめやめ!!いつまでも何を意識してるんだよ…。だから眠れないんだよ…。

ぺしぺしと頬を軽く両手で叩き、少し目を覚ましてからイヤフォンを耳につけ、那月は電車へ乗り込んだ。そして鞄を胸に抱えた時、その違和感に気が付いた。いつもより鞄が薄っぺらいのだ。

「…あ、うそ。弁当、忘れた」

一一一そうだ。母さんが昨日作ってくれたおかずを朝弁当に詰めて温めて…冷ましたまま忘れてきちゃった…。もう!!何してるんだ本当に…。あとで母さんに連絡入れておこう…。

一一一昼は購買に行くしかないな…。でも混むんだよな、みんな押し退け合うし…。頑張って買いに行くか。

「……昼、今日は先輩いるのかな、」

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