26 / 94
3
大丈夫だよ
しおりを挟む
那月は唇を強く噛みしめながら何とか泣くのを堪え、その後の授業は乗り切った。その間、男子達は大人しくしていたものの那月に対しての視線や言動は冷ややかなものだった。
「篠井って陰キャすぎね?」
「やっぱ他の奴も言ってたけど、キョドり方ウケるってか、きもいよな」
「きもい」「うざ」こんな言葉は聞き慣れていたはずなのに。希望が見えかけていたせいもあり、まだまだお前はダメなんだと奈落に突き落とされた感覚がして、言葉がいつもよりダイレクトに胸に突き刺さる。
「那月!大丈夫だった?さっき…」
そしてようやく授業が終わって教室へ帰る時。明衣が眉を下げながら駆け寄ってきた。那月はできるだけ心配かけないようにと、精一杯の笑顔を見せる。
「大丈夫だよ!怪我もしてないし!ごめんね、ビックリさせて…」
「那月…、やっぱり、あいつらに何かされたの?…」
「ああ!大丈夫だって、何もされてないよ。本当に僕が驚いて勝手にフラスコ落としただけだから…」
「明衣ー!どこー?片付け早くやっちゃお!うちら当番なんだから」
その時、他の女子の呼びかけに気付いた那月は明衣を戻るように促した。
「明衣、呼ばれてるよ!ほら…」
「いや、でも…!」
「僕は本当に大丈夫だから。ね?」
一一一また明衣に心配かけちゃったな。いつもいつも、守ってくれて心配してくれて…。僕も早く変わって、強くなりたいのに…。上手くいかない。
「だから行って行って!遅いと怒られちゃうよ。僕、今日も昼は中庭行ってくるから大丈夫だからね」
「…うん、分かった。また後でね!」
「はーい!」
手を振って化学室へ入る明衣を見送った那月は、教室へ帰り弁当を手に取る。そして一目散にいつもの場所へと向かった。
「…はぁ、はぁ」
勢いよく中庭に入っていつものベンチへと腰かける。チラッと隣を見ると、いつものように木の影から足が見えていない。
一一一そっか、今日は彩世先輩いないんだ。
こんな落ち込んだ時に、いつも安らぎに来ていた場所。前は男性がいたら安らぐことなんて出来なかったのに、今となっては彩世がいないことに肩を落としてる自分がいる。
「えっ…」
それに気付いた那月は、信じられないと言った表情でボーッと膝の上に置いた弁当箱を眺めた。そして風と共に大きめの独り言が口から溢れていく。
「…僕、今なんで。先輩がいないからって、ちょっと…ガッカリ…」
「先輩って、俺のこと?」
「…え?!!!うっ、わぁぁぁ!!!」
その独り言に、まさか返答が返ってくるなんて思いもしていなかった。誰もいないと思い込んでいたんだから。那月は0.5秒ほど遅れてから驚きひっくり返った。
「え、せ、せ、先輩…いつ、から…」
「さっきから」
誰もいないと思い込んでいた木の向こう側に、彩世はさっきから居たらしい。足が見えなかったのは、ベンチに寝っ転がってでもいたせいだろうか。いつの間にか座っている彩世の足が組まれて見えた。
一一一気付かなかった…!というか、思い切り独り言聞かれてた!!僕なんて言った?!
1人くしゃくしゃと頭を抱えあたふたする那月を他所に、彩世は大きくあくびをした。
「……あ、そのっ、ねっ…寝てた、んですね?」
一一一そうだ、話題変えよう。僕の変な独り言で気分が悪くなったかもしれないし…!
「篠井って陰キャすぎね?」
「やっぱ他の奴も言ってたけど、キョドり方ウケるってか、きもいよな」
「きもい」「うざ」こんな言葉は聞き慣れていたはずなのに。希望が見えかけていたせいもあり、まだまだお前はダメなんだと奈落に突き落とされた感覚がして、言葉がいつもよりダイレクトに胸に突き刺さる。
「那月!大丈夫だった?さっき…」
そしてようやく授業が終わって教室へ帰る時。明衣が眉を下げながら駆け寄ってきた。那月はできるだけ心配かけないようにと、精一杯の笑顔を見せる。
「大丈夫だよ!怪我もしてないし!ごめんね、ビックリさせて…」
「那月…、やっぱり、あいつらに何かされたの?…」
「ああ!大丈夫だって、何もされてないよ。本当に僕が驚いて勝手にフラスコ落としただけだから…」
「明衣ー!どこー?片付け早くやっちゃお!うちら当番なんだから」
その時、他の女子の呼びかけに気付いた那月は明衣を戻るように促した。
「明衣、呼ばれてるよ!ほら…」
「いや、でも…!」
「僕は本当に大丈夫だから。ね?」
一一一また明衣に心配かけちゃったな。いつもいつも、守ってくれて心配してくれて…。僕も早く変わって、強くなりたいのに…。上手くいかない。
「だから行って行って!遅いと怒られちゃうよ。僕、今日も昼は中庭行ってくるから大丈夫だからね」
「…うん、分かった。また後でね!」
「はーい!」
手を振って化学室へ入る明衣を見送った那月は、教室へ帰り弁当を手に取る。そして一目散にいつもの場所へと向かった。
「…はぁ、はぁ」
勢いよく中庭に入っていつものベンチへと腰かける。チラッと隣を見ると、いつものように木の影から足が見えていない。
一一一そっか、今日は彩世先輩いないんだ。
こんな落ち込んだ時に、いつも安らぎに来ていた場所。前は男性がいたら安らぐことなんて出来なかったのに、今となっては彩世がいないことに肩を落としてる自分がいる。
「えっ…」
それに気付いた那月は、信じられないと言った表情でボーッと膝の上に置いた弁当箱を眺めた。そして風と共に大きめの独り言が口から溢れていく。
「…僕、今なんで。先輩がいないからって、ちょっと…ガッカリ…」
「先輩って、俺のこと?」
「…え?!!!うっ、わぁぁぁ!!!」
その独り言に、まさか返答が返ってくるなんて思いもしていなかった。誰もいないと思い込んでいたんだから。那月は0.5秒ほど遅れてから驚きひっくり返った。
「え、せ、せ、先輩…いつ、から…」
「さっきから」
誰もいないと思い込んでいた木の向こう側に、彩世はさっきから居たらしい。足が見えなかったのは、ベンチに寝っ転がってでもいたせいだろうか。いつの間にか座っている彩世の足が組まれて見えた。
一一一気付かなかった…!というか、思い切り独り言聞かれてた!!僕なんて言った?!
1人くしゃくしゃと頭を抱えあたふたする那月を他所に、彩世は大きくあくびをした。
「……あ、そのっ、ねっ…寝てた、んですね?」
一一一そうだ、話題変えよう。僕の変な独り言で気分が悪くなったかもしれないし…!
10
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる