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またか
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今日は普通の授業ばかりで、特にグループ課題などは無かった。それに、まだ誰とも話せていない。那月は教科書を片付けながら時計を見た。次が6時間目で、それが終わればもう帰る時間だ。
一一一また何もできないまま終わってしまうのか。でも、話しかけたいのに男子を前にすると足がすくんで口が開かない…。
「篠井くん!今日って日直だよね。ちょっとこれ視聴覚室に運ぶの手伝ってもらっていい?」
「あ、はい!分かりました」
5時間目が終わった後の休憩中、女の先生からそう頼まれた那月はプリントや機材か何かが入ったカゴを受け取り、言われた通り視聴覚室に向かった。
一一一こうやって、今みたいに受け答えすればいいだけなのに、なんでできないんだろう。
「ありがと~、助かった。ちょっと先生職員室に寄るから、カゴ置いてカーテンだけ閉めといてくれる?」
「はい」
先生が去って行った後、那月はカゴを教卓の上に置き、広い視聴覚室の黒いカーテンをじりじりと引き始める。
ほとんどのカーテンを引き終えた時、廊下からだんだんこちらに近付いてくる数人の上履きの音が聞こえてきた。ただ生徒が歩いているだけかと思い気にしていなかったが、その足音達はピタッと視聴覚室の前で確かに止まった。
「…え」
那月が振り返ると、入り口には男子が3人。薄ら笑いを浮かべながらこっちを見て立っている。上履きの色からするに、同じ1年生だ。
だけど、何しに来たのかなんで笑っているのか那月には意味が分からず、ただ呆然と固まってしまった。
「あ、ほんとにいた。やっぱさっき先生と歩いて行ったのこいつだったんだ」
「だから言ったじゃん」
「あっはは、固まってるし。まじウケる」
話の内容的に、この人達は視聴覚室に用がある訳でなく、自分に用があるのだと気付いた。ただ、それは良い雰囲気ではなさそうで嫌な予感しかしない。
じりじりと近付いてきた3人は、中に入り扉を閉めて那月にゆっくり近寄ってきた。
「篠井くんだよねー?噂の」
「なんか男と全く絡まない子でしょ?」
手も足も震え、息があがる。口を開いたまま言葉が出てこない。この人達が誰なのか、なんで自分に話しかけてきたか疑問に思うより、この絡まれ方はやばいと全身が恐怖を感じている。
「うわー、マジで喋れないんだ。顔真っ青だけど大丈夫?おもしろ」
「だから噂通りじゃん!女好きの男嫌いだって」
「えーこんな大人しそうな顔して、やることやってんの?こっわー」
「面白そうだから、俺らが遊んでやろうと思ってさ」
一一一ああ、この感じ。忘れたくても忘れられないあの頃と重なる。束になって迫られる感じ、他人から向けられる嫌悪感と圧迫感。
一一一僕はただ、頑張りたかっただけなのに。なんで今もこんなことに?なんで僕なの?
「おい、聞いてるー?ねぇ篠井くん」
「…っひっ!?!わぁぁぁ!!」
呆然としていた那月の肩に1人が腕を回してきた。恐怖のあまり、那月はそれを思い切り払い除けて、勢いよく床に尻もちをついた。
「え、何今の」
「ぶっ!ははは!!怖がられてるじゃん!」
「俺らが怖いのー?可愛いねぇ」
「てかさ、こいつ本当は男が怖いんじゃね?ほら、見ろって。めっちゃ震えてるじゃん」
座り込んだままカタカタと震える那月を見て、3人は面白そうに手を叩いて笑う。那月の頭には、昔のトラウマが鮮明に浮かび上がってしまっていた。
そして、3人は那月の目の前にしゃがみ込み、更に不敵な笑みを浮かべる。
「てか、よく見たらコイツ顔よくない?まじ女みたい」
「え、やっちゃう?お前らは無理だけど、こいつなら俺ちょっと興味あるんだけど」
「分かる、怯えられるとそそるよな?」
一一一やばい、この雰囲気は。年齢と体の大きさは違っても、あの時と似てる。怖い怖い怖い怖い。嫌だ嫌だ嫌だ!!!!
「…っ!!!や!いっ、やめっ!!」
「おお、抵抗されると燃えるわー」
必死に抵抗したくても、3人がかりでは歯が立たないし、恐怖のあまり口が上手く動かず声も出せない。
さっきカーテンを引いたせいで、廊下からも中は見えないし、中は薄暗い。こんなの外からも気付いてもらえない。
「手、抑えろよ。てか次ここ使うか?」
「いや、放課後に委員会で使うだけらしいから次は大丈夫だってよ」
「どこ情報だよ!でもラッキー」
2人に体を抑え込まれ、もう1人が那月のシャツに手をかけた。ボタンを1つ2つ外されたところで、とうとう那月の目から涙が溢れ出た。
一一一またか…。またこうなるんだ。なんでなんで、なんでいつも僕はこうなるの?やっぱり僕のせいなの?全部全部、全部。
「………っぁ、助け、、」
一一一誰か、誰か助けて、もう1人じゃ無理だ。女の人でも男の人でも、誰でもいいから助けて一一一。
ガラッ
一一一また何もできないまま終わってしまうのか。でも、話しかけたいのに男子を前にすると足がすくんで口が開かない…。
「篠井くん!今日って日直だよね。ちょっとこれ視聴覚室に運ぶの手伝ってもらっていい?」
「あ、はい!分かりました」
5時間目が終わった後の休憩中、女の先生からそう頼まれた那月はプリントや機材か何かが入ったカゴを受け取り、言われた通り視聴覚室に向かった。
一一一こうやって、今みたいに受け答えすればいいだけなのに、なんでできないんだろう。
「ありがと~、助かった。ちょっと先生職員室に寄るから、カゴ置いてカーテンだけ閉めといてくれる?」
「はい」
先生が去って行った後、那月はカゴを教卓の上に置き、広い視聴覚室の黒いカーテンをじりじりと引き始める。
ほとんどのカーテンを引き終えた時、廊下からだんだんこちらに近付いてくる数人の上履きの音が聞こえてきた。ただ生徒が歩いているだけかと思い気にしていなかったが、その足音達はピタッと視聴覚室の前で確かに止まった。
「…え」
那月が振り返ると、入り口には男子が3人。薄ら笑いを浮かべながらこっちを見て立っている。上履きの色からするに、同じ1年生だ。
だけど、何しに来たのかなんで笑っているのか那月には意味が分からず、ただ呆然と固まってしまった。
「あ、ほんとにいた。やっぱさっき先生と歩いて行ったのこいつだったんだ」
「だから言ったじゃん」
「あっはは、固まってるし。まじウケる」
話の内容的に、この人達は視聴覚室に用がある訳でなく、自分に用があるのだと気付いた。ただ、それは良い雰囲気ではなさそうで嫌な予感しかしない。
じりじりと近付いてきた3人は、中に入り扉を閉めて那月にゆっくり近寄ってきた。
「篠井くんだよねー?噂の」
「なんか男と全く絡まない子でしょ?」
手も足も震え、息があがる。口を開いたまま言葉が出てこない。この人達が誰なのか、なんで自分に話しかけてきたか疑問に思うより、この絡まれ方はやばいと全身が恐怖を感じている。
「うわー、マジで喋れないんだ。顔真っ青だけど大丈夫?おもしろ」
「だから噂通りじゃん!女好きの男嫌いだって」
「えーこんな大人しそうな顔して、やることやってんの?こっわー」
「面白そうだから、俺らが遊んでやろうと思ってさ」
一一一ああ、この感じ。忘れたくても忘れられないあの頃と重なる。束になって迫られる感じ、他人から向けられる嫌悪感と圧迫感。
一一一僕はただ、頑張りたかっただけなのに。なんで今もこんなことに?なんで僕なの?
「おい、聞いてるー?ねぇ篠井くん」
「…っひっ!?!わぁぁぁ!!」
呆然としていた那月の肩に1人が腕を回してきた。恐怖のあまり、那月はそれを思い切り払い除けて、勢いよく床に尻もちをついた。
「え、何今の」
「ぶっ!ははは!!怖がられてるじゃん!」
「俺らが怖いのー?可愛いねぇ」
「てかさ、こいつ本当は男が怖いんじゃね?ほら、見ろって。めっちゃ震えてるじゃん」
座り込んだままカタカタと震える那月を見て、3人は面白そうに手を叩いて笑う。那月の頭には、昔のトラウマが鮮明に浮かび上がってしまっていた。
そして、3人は那月の目の前にしゃがみ込み、更に不敵な笑みを浮かべる。
「てか、よく見たらコイツ顔よくない?まじ女みたい」
「え、やっちゃう?お前らは無理だけど、こいつなら俺ちょっと興味あるんだけど」
「分かる、怯えられるとそそるよな?」
一一一やばい、この雰囲気は。年齢と体の大きさは違っても、あの時と似てる。怖い怖い怖い怖い。嫌だ嫌だ嫌だ!!!!
「…っ!!!や!いっ、やめっ!!」
「おお、抵抗されると燃えるわー」
必死に抵抗したくても、3人がかりでは歯が立たないし、恐怖のあまり口が上手く動かず声も出せない。
さっきカーテンを引いたせいで、廊下からも中は見えないし、中は薄暗い。こんなの外からも気付いてもらえない。
「手、抑えろよ。てか次ここ使うか?」
「いや、放課後に委員会で使うだけらしいから次は大丈夫だってよ」
「どこ情報だよ!でもラッキー」
2人に体を抑え込まれ、もう1人が那月のシャツに手をかけた。ボタンを1つ2つ外されたところで、とうとう那月の目から涙が溢れ出た。
一一一またか…。またこうなるんだ。なんでなんで、なんでいつも僕はこうなるの?やっぱり僕のせいなの?全部全部、全部。
「………っぁ、助け、、」
一一一誰か、誰か助けて、もう1人じゃ無理だ。女の人でも男の人でも、誰でもいいから助けて一一一。
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