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さっきの先輩
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「!!わっ……」
まさかこちらを見ると思っていなかった那月は、またその先輩と目が合い、驚いてしゃがみ込んだ。条件反射で、意思とは関係なく体が勝手に動いてしまうように。
那月は、しゃがみ込んだまま悔しさから唇を噛み締める。いつの間にか癖付いてしまった行為だ。こういう時、辛い時や、やるせない時、耐えるために下唇を噛んでしまう。
「また避けちゃった…。あの先輩も変に思うだろうな」
恐る恐る立ち上がって、窓から目だけを出して下を覗いてみた。すると、その先輩はこちらを見て首を傾げた後、背を向けて歩いて行った。那月はホッとしたような、申し訳なさを感じてその後ろ姿を目で追った。
スラッとしていて背が高い。シャツの上に学校指定のベージュのセーターを着ていて、腕には風紀委員のバッジ。顔はよく見えなかったけど、前髪は少し長かった。
年上というのもあるせいか、見れば見るほど男の人という感じが伝わってきて、やっぱり怖く思ってしまう。
だが同級生とすらまともに話せないのに、3年生となんて関わることはまずないだろう。あの先輩が誰かも全く知らない。もしかして、あの人は自分が知らないだけで、気配を感じ取ることに優れたとんでもない人なんだろうか。
那月は少しの間、そんなことを考えながらその場に座り込んでいた。目が合った時のことを思い出して、少しイメトレをしてみながら。
一一一あの人に限ったことじゃない。できるだけ早く、せめて恐れずに男の人の目が見れるくらいにはなりたい。
一一一明日こそは、明後日こそは。その次の日こそは…。
「…いつもそう思ってるけど、なんも変わらないな」
遠くで運動部のかけ声と、残っている生徒達の笑い声を感じながら、那月は1人立ち上がって家へ帰るため歩き始めた。
まさかこちらを見ると思っていなかった那月は、またその先輩と目が合い、驚いてしゃがみ込んだ。条件反射で、意思とは関係なく体が勝手に動いてしまうように。
那月は、しゃがみ込んだまま悔しさから唇を噛み締める。いつの間にか癖付いてしまった行為だ。こういう時、辛い時や、やるせない時、耐えるために下唇を噛んでしまう。
「また避けちゃった…。あの先輩も変に思うだろうな」
恐る恐る立ち上がって、窓から目だけを出して下を覗いてみた。すると、その先輩はこちらを見て首を傾げた後、背を向けて歩いて行った。那月はホッとしたような、申し訳なさを感じてその後ろ姿を目で追った。
スラッとしていて背が高い。シャツの上に学校指定のベージュのセーターを着ていて、腕には風紀委員のバッジ。顔はよく見えなかったけど、前髪は少し長かった。
年上というのもあるせいか、見れば見るほど男の人という感じが伝わってきて、やっぱり怖く思ってしまう。
だが同級生とすらまともに話せないのに、3年生となんて関わることはまずないだろう。あの先輩が誰かも全く知らない。もしかして、あの人は自分が知らないだけで、気配を感じ取ることに優れたとんでもない人なんだろうか。
那月は少しの間、そんなことを考えながらその場に座り込んでいた。目が合った時のことを思い出して、少しイメトレをしてみながら。
一一一あの人に限ったことじゃない。できるだけ早く、せめて恐れずに男の人の目が見れるくらいにはなりたい。
一一一明日こそは、明後日こそは。その次の日こそは…。
「…いつもそう思ってるけど、なんも変わらないな」
遠くで運動部のかけ声と、残っている生徒達の笑い声を感じながら、那月は1人立ち上がって家へ帰るため歩き始めた。
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