純情 パッションフルーツ

坂本 光陽

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【深水エリ著『クロコダイルの恋人』から一部抜粋】


 子供は親を選べない、という言い方がある。親も理想的な子供を選べないだろうが、産む産まないの絶対的な選択はできる。保護者としての責任とともに。

 私は親になったことはないので、子供の立場で考えてみる。
 もし、子供が親を選べたとしたら、という仮定の話である。私が他の親を選ぶことのできる権利を与えられたとしよう。私はどうなるだろうか? 親が違うのだから、必然的に遺伝子は違う。

 私は私ではなくなり、別の私になってしまう。当然の話である。

 少し話を進めて、性別を選べたらどうだろう。人間は染色体の組み合わせによって、男か女かが決まってしまう。ただ、ワニやカメ、トカゲといった動物は、そうではない。卵の時の周囲の温度によって、オスかメスかが決まるらしい。

 だとすると、私はワニやカメに近いのかもしれない。その時の気温によって、性別をかえられるのだから。寒くなると女っぽくなり、暑くなると男っぽくなるのだ。下品な言い方をすると、肌寒い夜には逞しい男に抱かれなくなり、熱帯夜には可愛い女を抱きたくなるということ。

「ちょっと、エリさん、心の声がダダモレですよ」
 ルームメイトの堅物かたぶつ,美奈ちゃんが苦笑する。
「あらそう? 誰に聞かれても、別にいいけどね」

「エリさん、両性具有りょうせいぐゆうなんですか?」
「違う。バイ・セクシャルとも違う」
「どう違うんですか?」

「決め手になるのは、その日の最低気温と最高気温。ちなみに、地球温暖化は私の男性化に拍車をかけている。皆ちゃん、私のことは今日から、ミス・クロコダイルと呼んでね」
「……」
 どうやら、彼女はジョークが理解できなかったらしい。
「クロコさんでもいいのよ」

 私は彼女を引き寄せて、ピンクの唇にキスをした。
 興が乗ってくると情熱的に舌先をからませてみる。
 猛暑日が続いており、私の男性化は今やマックス。
 可愛い美奈ちゃんをベッドに押し倒し、私たちは(以下、割愛)

                  *

 またもや、きわどいシーンの登場だ。フィクションであるとはわかっていても、とても読んではいられない。それにしても、この頃のエリさんにとって、「セックス」や「性別」は小説の重要なモチーフだったのだろうか?
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