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鬼頭家の秘密⑤(完)

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 啓磨は絶望的な想いにかられるが、愛子は朗らかに告げる。
「せっかく作ったギョウザが冷めちゃう。話の続きは食べながらにしましょ」

 愛子のギョウザは、啓磨の大好物である。落ち込みそうな気分を奮い立たせるように、次から次へと胃袋を満たしていく。愛子は笑顔で見守りながら、
「美味しい?」と訊いてくるが、啓磨は慌ただしく頷くだけだ。

 胃を満たして人心地がついたところで、ようやく啓磨は口を開く。
「父さんも知っているの? 僕や母さんが鬼だっていうこと」

「もちろんよ。父さんは鬼の中の鬼だから」さらに、こう付け加える。「父さんはね、日本中の鬼を束ねていて、〈頭鬼〉と呼ばれているの」
〈頭鬼〉というのは文字通り、鬼たちの頭首という意味だという。

「全国各地を飛び回っているのは、人知れず問題を解決する用事もあるから。人とのいさかいは避けたいけど、厄介なことに、いつの時代も鬼は嫌われているのよね」

「鬼って化け物とか怪物のイメージがあるし、そうだと思うよ。自分が鬼だなんて実感は全然ないけどさ」

「そういった一切合切の厄介ごとを解消していくのも、鬼頭家の定めなの。啓ちゃんは近い将来、〈頭鬼〉を引き継ぐことになるんだから、しっかりね」

 愛子がサラリと言ったので、その言葉の意味を咀嚼するのに時間がかかった。
 啓磨が近い将来、〈頭鬼〉を父から引き継ぎ、鬼の頭首になる。愛子は確かに、そう言ったのだ。

 頭首の務めがどういうものなのか、啓磨には具体的にイメージすることは難しい。おそらく、かなり面倒くさいことを押し付けられるのだろう。自分が鬼だったという真実だけでも悩ましいのに、これ以上の精神的苦痛は勘弁してもらいたい。

 けど、両親がそう言うのなら、それは絶対に回避できない決定事項である。
 愛子の笑顔を見ながら、啓磨は溜め息を吐くしかないのだった。


                   了

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