12 / 26
青きジレンマ②
しおりを挟む
通学路を歩いている時から、すでにその予兆はあった。高校生たちが啓磨を見ては囁き合っていたのだ。中には遠慮なく指さして笑っている奴もいる。啓磨が通り魔の襲われたことは、高校じゅうに知れ渡っていたのだ。
教室に入った途端、啓磨はクラスメイトに取り囲まれた。もみくちゃにされて、質問攻めにあった。マスコミに追われる芸能人気分である。もちろん、不愉快でわずらわしいという点で。
「通り魔は2mの大男って噂は本当か?」
「そいつ、ナイフを持っていたんだろ?」
「おまえ、マジ殺されたんじゃねぇのか」
三バカトリオは相変わらずだった。啓磨にうるさくつきまとい、適当にあしらっていると、こんな餌を投げかけてきた。
「おまえの姉ちゃん、気をつけた方がいいぜ。厄介な奴に狙われているからな」
「おい、聞き捨てにならないな。どうして、通り魔が、か……姉さんを狙うんだ」
思わず、母さんと言いかけて、啓磨は声が上ずってしまう。三バカが「姉ちゃん」と呼んでいるのは、もちろん愛子のことだ。愛子が狙われていると聞いては、のんびり構えてはいられない。
「バカ、姉ちゃんを狙っているのは通り魔じゃねぇ。野球部の世良さんだよ」
「よりによって、肥満体の世良泰造だよ。体重の重さでは文句なしの全校一」
「あの怪力で抱きしめられたら、姉ちゃんの背骨なんかポッキリ折れちまう」
話が逸れていく一方なので、たまらず啓磨が口を挟む。
「ちょっと待てよ。どうして、世良さんが姉さんのことを知っているんだ?」
「ほら、少し前に、おまえが忘れた弁当箱を登校前に届けにきてくれただろ」
「あの時、見初めたんだと。一目ぼれってやつ。ああ、姉ちゃん、御愁傷様」
それを聞いた啓磨は思わず、カッとしてしまう。
「バカ、死んじゃいねぇ。そんな縁起でもないこと冗談でも言うんじゃねぇ」
「おっ、出たな。シスコン野郎。姉ちゃんは悪党の手から俺が守るぜってか」
「世良さんはねちっこいぜ。俺の読みじゃ、今日中にやってくると思うねぇ」
その予言は意外にも的中する。啓磨が昼休みに上級生の呼び出しを食らい、体育館裏に行ったところそこで待っていたのは、噂の世良泰三だった。
教室に入った途端、啓磨はクラスメイトに取り囲まれた。もみくちゃにされて、質問攻めにあった。マスコミに追われる芸能人気分である。もちろん、不愉快でわずらわしいという点で。
「通り魔は2mの大男って噂は本当か?」
「そいつ、ナイフを持っていたんだろ?」
「おまえ、マジ殺されたんじゃねぇのか」
三バカトリオは相変わらずだった。啓磨にうるさくつきまとい、適当にあしらっていると、こんな餌を投げかけてきた。
「おまえの姉ちゃん、気をつけた方がいいぜ。厄介な奴に狙われているからな」
「おい、聞き捨てにならないな。どうして、通り魔が、か……姉さんを狙うんだ」
思わず、母さんと言いかけて、啓磨は声が上ずってしまう。三バカが「姉ちゃん」と呼んでいるのは、もちろん愛子のことだ。愛子が狙われていると聞いては、のんびり構えてはいられない。
「バカ、姉ちゃんを狙っているのは通り魔じゃねぇ。野球部の世良さんだよ」
「よりによって、肥満体の世良泰造だよ。体重の重さでは文句なしの全校一」
「あの怪力で抱きしめられたら、姉ちゃんの背骨なんかポッキリ折れちまう」
話が逸れていく一方なので、たまらず啓磨が口を挟む。
「ちょっと待てよ。どうして、世良さんが姉さんのことを知っているんだ?」
「ほら、少し前に、おまえが忘れた弁当箱を登校前に届けにきてくれただろ」
「あの時、見初めたんだと。一目ぼれってやつ。ああ、姉ちゃん、御愁傷様」
それを聞いた啓磨は思わず、カッとしてしまう。
「バカ、死んじゃいねぇ。そんな縁起でもないこと冗談でも言うんじゃねぇ」
「おっ、出たな。シスコン野郎。姉ちゃんは悪党の手から俺が守るぜってか」
「世良さんはねちっこいぜ。俺の読みじゃ、今日中にやってくると思うねぇ」
その予言は意外にも的中する。啓磨が昼休みに上級生の呼び出しを食らい、体育館裏に行ったところそこで待っていたのは、噂の世良泰三だった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜
瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。
大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。
そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。
オタク病
雨月黛狼
キャラ文芸
オタクを公にできない窮屈な青春時代を送った人たちへ
生粋のオタクである猪尾宅也は日々、オタク活動に励んでいた。
しかし、現代では二次元に没頭している人たちを「社会性欠乏障害」通称「オタク病」という病気と診断される。
そんなオタクとして生きづらい世界で宅也は同じくオタク病の少女、久遠環に出会う。
環の手助けをしたのち、告白をされる。
環の目的はこの世界からオタクの差別をなくすこと。
それを、宅也とともに遂行してゆく。
これは、オタクが究極のフィクションを求める新感覚コメディ。
ぜひ、よろしくお願いします。
光波標識 I find you.
梅室しば
キャラ文芸
【船でブラキストン線を跨いで北海道へ。「まがい魚」の呪いから友を救え。】
喉に『五十六番』と名付けられた妖を寄生させている大学生・熊野史岐には、霊視の力を持つ友人がいる。彼の名は冨田柊牙。ごく普通の大学生として生活していた柊牙は、姉の結婚祝いの為に北海道へ帰省した時、奇妙な魚の切り身を口にしてから失明を示唆するような悪夢に悩まされるようになる。潟杜から遠く離れた地で受けた呪いをいかにして解くか。頭を悩ませる史岐達に発破をかけたのは、未成年にして旧家の当主、そして『九番』と呼ばれる強力な妖を使役する少女・槻本美蕗だった。
※本作はホームページ及び「pixiv」「カクヨム」「小説家になろう」「エブリスタ」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる