上 下
133 / 248

熟れきった初夜⑥

しおりを挟む
 利用客に人気が高く、すぐ予約がふさがるスウィートルームだ。ゆったりとしたスペースを誇り、北欧の家具、調度品が目を引く。

 大きくとられた窓からは美しい夜景を見下ろせる。そして、奥の部屋には、純白のシーツに覆われたキングサイズのベッド。僕たちが初夜を迎える舞台だった。

 冬子さんはドレスの裾をさばきながら、コッペパンみたいなソファに腰を下ろした。

「最終確認というと、例の件ですね」彼女と対峙する形で、僕も腰を下ろす。「申し訳ありませんが、御期待に添えることはできません」

 これだけはキチンと伝えなければならない。

「そう、残念ね。理由を聞いてもいいかしら」

「冬子さん、僕はコールボーイにすぎません。女性の方を抱くことはしますが、子供を作ることは仕事の範疇はんちゅうを超えてしまいます」

「行為に見合った代金は支払うし、シュウくんは認知をしなくていい。すべての責任は私にあって、君やお店には一切迷惑をかけません。そう明記した誓約書を書いてもダメかな?」

「……残念ながら」

「そう、仕方ないわね」冬子さんは溜め息を吐く。「シュウくんと何度もデートして、君の子供が欲しいな、と思ったんだけど」

「そのお気持ちはとてもうれしいです。でも……、申し訳ありません」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

処理中です...