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クラブ・キャッスル③
しおりを挟むついさっき、カズは僕のことを「『キャッスル』のナンバー1」と言った。『キャッスル』というのは僕たちの所属するクラブの名前だ。ただ、僕は「ナンバー1」ではない。
一番の売れっ子なのは、カズの方だ。ちゃらく見られがちだが、意外と気配りの人である。常連さんが入院したりすると、旦那さんのいない時を狙って、サプライズで花束を届けたりするらしい。僕には照れくさくてできない芸当だ。
「シュウさんが物欲に目覚めて本気で働きだしたら、俺なんかメじゃないっすよ」
カズは以前そんなことを言ったが、お世辞でないなら買いかぶりだ。
「カズが電車に乗るなんて珍しいな。お客様からもらった赤のロードスターはどうしたの?」
「デート以外では使いませんよ。今日はシュウさんを見習って電車通勤ですからね。一般人の感覚を失わないようにしないと」
カズはニヤリと笑って、僕の顔を指差した。
「覚悟してくださいよ。そのうちシュウさんを丸裸にして、秘密をすべて暴いてやるっすから」
すれちがう女子高生たちがクスクス笑っているのは、しきりにカズが僕にじゃれつくせいだ。彼女たちの口から、「BL」という単語がもれる。
とんだ誤解だ。勘弁してもらいたい。
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