ブラックアイドル【Ｒ１８】

王様への復讐④

「なるほど、僕のアドバイスを覚えていてくれたんですね」

　世間にアピールするためには、インパクトのある動画や写真が不可欠、と三原さんから聞いていた。話だけでは説得力はないし、信用度も低い。誰も相手にしてくれないし、当然、マスコミも取り上げてくれない。

　三原さんは手提げ袋と私の顔を代わる代わる見てから、
「中身を見る前に、確認をさせてください。ケイさんはそんなことはないと思うのですが、事が終わってから、“話がちがう。もっとこうして欲しかった”とか、クレームを受けることが少なくないのです。例えば、ケイさんへの見返りの件ですが……」

「報酬ということなら、何も必要ないですよ」
　私は速水さんを“売る”形になるが、そんなおカネは一銭もいらない。
「すべて、三原さんにお任せします」

「わかりました。ただ、この物証の中身を検討して復讐の内容を決定するまで、しばらく時間があります。もし、心変わりがあれば遠慮なく仰ってください」

　三原さんは手提げ袋の中を覗き込んだ。
　中身は、Ｓ―ＶＨＳのコンパクトビデオカセットテープである。かなり前のメディア媒体なので、ビデオカメラの小型化が進んだ現在では、ほとんど使われていないと思う。
　音楽用のカセットテープを思い浮かべてほしい。大きさは同じぐらいだけど、厚みは二倍ほど。磁気テープの太さがＶＨＳビデオテープと同じせいだ。

　三原さんはビデオテープに貼られたラベルシールを見て、
「〈はやみ先生の説教部屋〉」と読み上げた。
「はい。昔のバラエティ番組に、そんなコーナーがあったんです。三原さんは『大好き、はやみ先生』という番組を御存知ですか？」