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王様の裏の顔③
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レザーバッグの中身は、お仕置きの道具一式である。速水さんは冷ややかな目つきで、洗濯ばさみを摘まみ上げた。見慣れたプラスチック製ではない。木製であり、強力なバネの特注品だ。
いきなりバチンと、左の乳首を挟まれた。バネが強いので肉に食い込み、血がにじんでくる。鋭い痛みには慣れることがない。思わず、前かがみになってしまうが、速水さんは私の髪の毛を掴んで、乱暴に引き起こす。
「逃げんじゃねぇよ。お仕置きになんねぇだろうが」
「……す、すいません」
右乳首もバチンと挟まれた。断っておくけれど、私はMではない。痛いのは苦手だし、大嫌いだ。
皮膚の薄い喉元や脇腹も洗濯ばさみで挟まれる。表情が歪む。涙がこぼれ落ちる。唇を噛みしめ、ひたすら我慢する。
「みっともない泣き顔だな。こんな不細工な顔、めったにねぇぞ。鮎川、おめぇもそう思うだろ」
「……はい、そう思います。私は、不細工です」
ぴしゃぴしゃと頬を軽く張られ、時折り、思い切り拳で殴られる。
口から悲鳴がもれるが、じっと耐える。煙草の火でお腹を焼かれるお仕置きがないことを、ひたすら願う。
速水さんは笑いながら、時価数十万円のワインをらっぱ飲みにしている。最近、酒量が増えているように思う。本人は否定しているが、おそらくアルコール依存症なのだろう。
元タレントの私にあてがわれた仕事は、王様の身の回りのお世話だけど、本当は密やかな娯楽を提供する玩具にすぎない。
私がMでないように、速水さんもSではない。少なくとも、真性のSではない。
速水さんの責め方は、素人のそれに近い。まるで、ごっこ遊びだ。女王様のバイト経験がある私が言うのだから、間違いはない。
プロ御用達の責め道具を購入したくせに、満足に扱うことができず、洗濯ばさみなんて手近な道具で済ませているぐらいだ。
速水さんはスーパーアイドルだけど、はっきり言って中身がない。
業界人どもは「本物のオーラがある」だの、「天才的パフォーマー」だの、「頭の回転が半端ねぇ」だの、無責任に褒めたたえるが、身近な私には断言できる。
速水さんは空っぽだ。マジ、何もない。
いきなりバチンと、左の乳首を挟まれた。バネが強いので肉に食い込み、血がにじんでくる。鋭い痛みには慣れることがない。思わず、前かがみになってしまうが、速水さんは私の髪の毛を掴んで、乱暴に引き起こす。
「逃げんじゃねぇよ。お仕置きになんねぇだろうが」
「……す、すいません」
右乳首もバチンと挟まれた。断っておくけれど、私はMではない。痛いのは苦手だし、大嫌いだ。
皮膚の薄い喉元や脇腹も洗濯ばさみで挟まれる。表情が歪む。涙がこぼれ落ちる。唇を噛みしめ、ひたすら我慢する。
「みっともない泣き顔だな。こんな不細工な顔、めったにねぇぞ。鮎川、おめぇもそう思うだろ」
「……はい、そう思います。私は、不細工です」
ぴしゃぴしゃと頬を軽く張られ、時折り、思い切り拳で殴られる。
口から悲鳴がもれるが、じっと耐える。煙草の火でお腹を焼かれるお仕置きがないことを、ひたすら願う。
速水さんは笑いながら、時価数十万円のワインをらっぱ飲みにしている。最近、酒量が増えているように思う。本人は否定しているが、おそらくアルコール依存症なのだろう。
元タレントの私にあてがわれた仕事は、王様の身の回りのお世話だけど、本当は密やかな娯楽を提供する玩具にすぎない。
私がMでないように、速水さんもSではない。少なくとも、真性のSではない。
速水さんの責め方は、素人のそれに近い。まるで、ごっこ遊びだ。女王様のバイト経験がある私が言うのだから、間違いはない。
プロ御用達の責め道具を購入したくせに、満足に扱うことができず、洗濯ばさみなんて手近な道具で済ませているぐらいだ。
速水さんはスーパーアイドルだけど、はっきり言って中身がない。
業界人どもは「本物のオーラがある」だの、「天才的パフォーマー」だの、「頭の回転が半端ねぇ」だの、無責任に褒めたたえるが、身近な私には断言できる。
速水さんは空っぽだ。マジ、何もない。
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