写楽、一両年にて止ム

幕間

　突然失礼いたします。作者の坂本です。
　無粋を承知の上で、断っておきたいことが、一つ二つあります。

　斎藤十郎兵衛を架空の人物と思っておられる方はいないでしょうか？　十郎兵衛は実在していた能役者です。もう一つ、十郎兵衛が写楽だったという仮説も、僕のオリジナルではありません。

「東洲斎写楽＝斎藤十郎兵衛」は最も古い仮説であり、平成の時代に定説となっています。

　ギリシャで見つかった写楽の肉筆画によって、喜多川歌麿，歌川豊国などの有名絵師説、蔦屋重三郎説が消え、さらに斎藤十郎兵衛の情報が少しずつわかってきたため、この仮説はゆるがないものと思われます。

　では、斎藤十郎兵衛は何を考え、何をしようとしていたのか？
　それは、誰にもわかりません。その部分に、フィクションの入り込む余地が残されています。

　それでは、この物語の後半を続けましょう。