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第二の謎

下手人の告白②

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「だから、二人を殺めたんですか? かつて愛していた大吉さんと、姉の加代さんを」

「いけませんか? あたしを裏切って恥知らずな嘘まで吐き、挙句の果てに見捨てるなんて、畜生にも劣りますよ」

「登代さんの怒りはごもっともです。その一切合切の怒りを込めた行為が、加代さんの顔に切り刻んだドーマンだった。例の網目模様の傷であり、星形のセーマンと一緒に、魔除けの意味合いももっていた。登代さん、この理解で合っていますか?」

 その問いかけには答えず、登代は鼻で笑いながら、
「ああ、言い忘れていました。この際、洗いざらい言ってしまいます。大吉さんと姉は江戸へ逃げる際、あちこちの借金を踏み倒しているんです。その借金のせいで、あたしは地獄をみたんですよ」

「その地獄とは何でぇ」と、亀三が訊いた。

「大吉さんと姉のせいで、あたしが下総で、どんな扱いを受けたかわかりますか? 毎日のように、柄の悪い取り立て人がやってきましたよ。手籠てごめにされたのは、一回や二回じゃないです。毎日が地獄のようでした。それもこれも、二人のせいですよ」

「……」

「あたしは黙って、耐え続けなければいけなかったんですか。ええっ、親分さん、教えてくださいよっ」

 登代の怒号に気圧されて、さすがの亀三も言い返せなかった。

「登代さん、どうやら、魔除けの効き目がなかったようですね。あんたは今、トモカズキにとりつかれている」
「だったら、どうすれば、よかったんですか。黙って耐えていろとでも言うんですか」

「わかっているじゃないですか。魔物みたいな連中など、関わるべきじゃなかった。ましてや殺めるなんて、自分で自分の首を絞めるようなものです」

「……」

「そうそう、大吉さんと加代さんは江戸に来てから、早々に借金を重ねていましたよ。暮らしは汲々きゅうきゅうしていたんじゃないですかね。お隣の話では夫婦喧嘩も結構していたようだし、決して幸せな暮らしぶりじゃなかった」

「……」
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