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第二の謎

幽霊の正体③

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「隣の女房によると、加代さんは以前、下総で海女さんをしていたそうです。魚の行商人である大吉さんに見初められるまで、海に潜ってアワビなどを採っていた。妹の登代さんも隅田川での泳ぎっぷりを見る限り、海女さんのようですね」

「なるほど、そいつは納得だが、海女と血文字とどう関わってくるんだ」

「親分、ドーマンセーマンは海女さんの魔除けなんです。海中には魔物が潜んでいますから、日常的に魔除けが欠かせない」

 その風習は現代まで受け継がれており、三重県志摩地方では魔除けとしてのドーマンセーマンを目にすることができる。

「トモカズキという海の魔物がいるそうです。海の中で自分そっくりの女が親し気に近づいてくる。アワビをくれたりするそうですよ。そのうち、よく採れる場所に一緒に行こう、と誘ってくる。深い場所まで連れていかれて、そこで溺れて息絶えてしまう」

「トカモズキだと? どこかで聞いたな」

「そのはずです。ほら、隣の女房が聞いたという、モカズキですよ。加代さんが吐き捨てた言葉は、トモカズキの聞き間違いだった。つまり、加代さんは登代さんのことを、トモカズキだと思っていた。自分そっくりの魔物だと考えていた、というわけです」

 登代は顔を伏せたまま、黙って聞いていた。

「登代さんには悪いが、加代さんは魔物に例えるほど、登代さんをうとましく思っていた。登代さんも加代さんに何らかの含むところがあった。一体、姉妹に何があったのか、それは私にはわかりません」

 貞次郎は登代の肩に手を置いて、
「登代さん、お願いです。どういう経緯いきさつがあったのか、私たちに教えてもらえませんか。人を殺めることは許されることじゃない。でも、登代さんには登代さんなりの考えや言い分があるはずだ」

「……」

「何も言わずに刑罰を受けるより、その方がよっぽどいい。加代さんと大吉さんに申し訳ないという気持ちがあるなら、きっと罪滅ぼしになるはずですよ」
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