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浪人と岡っ引き③
しおりを挟む源八が向かったのは、見世物小屋のあった神社の境内だった。魚市のすぐそばなのに、ひと気が感じられないのは、森の闇が深いからだろう。二人は鳥居を潜り抜け、無人の小道を登る。
「ここらでいいだろう」
源八は足を止めたのは、偶然にも、見世物小屋のあった場所だった。もっとも、小屋自体はとっくに解体され、その痕跡すらなくなっていたのだが。
「薄暗くて気味が悪いねぇ。親分は平気なのかい?」
「闇に生きるものが闇を怖がってどうする。てめぇだって、同じ穴の貉だろうに」
「いやいや、それは断固、否定させてくれ。これでも、真っ当に生きているつもりだぜ」
「真っ当な男が、俺様を脅したりするかよ」そう言って、狂暴な獣の目で睨みつける。
岡っ引きとは、現代の警察官のような真っ当な人間ではない。お上に対する非公認の協力者にすぎず、基本的にヤクザ者だ。その本性を露わにしただけである。それは子供なら思わずちびってしまいそうな、外道の目つきだった。
その時、背後に人の気配があった。源八配下のならず者たちだ。源八と合わせて四人で、希之介を取り囲む。
「おいおい、とんだいいがかりだな。誰がいつ、親分を脅したって?」
希之介は笑っているが、源八たちは真顔である。
「話し合いの余地なしか。どうしたいんだ? そういうことは、訊くだけ野暮か」
希之介の目つきが鋭くなる。真後ろの男が襲いかかってきたが、素早く身体をずらして、右の裏拳で相手の顔面を打つ。それだけで男は昏倒した。
右の男と左の男は同時に拳をふるってきたが、あまりにものろすぎて、希之介をとらえることはできない。腰の入った蹴りを一発ずつ食らい、苦悶の表情で地面をのたうちまわっている。
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