テレビハラスメント

坂本 光陽

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仕事のできないAD①

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 現場に配属されたばかりの新人ADは、最初は元気に笑顔を見せているのですが、数日後には見事に表情を失います。不眠不休のハードワークが原因なのですが、まるで一度に5歳も年をとったような変化には、毎年驚かされました。

 制作現場はいつも体育会系の厳しさです。ひと昔前のような鉄拳制裁はなくなりましたが、先輩の理不尽な仕打ちは変わっていません。「新人ADを鍛えるため」とは言いますが、口汚い叱責は傍から見ていて、あまり気持ちのいいものではありません。

 ほとんどのADは、存在感が希薄きはくで、影が薄く感じられます。自ら率先して動きまわり、Dの指示以上の働きをするADは、ほんの一握りにすぎません。大半は命じられたことだけ忠実にこなすか、それすらできずにDの足を引っ張り続けるか。その二通りだけです。

 特に「仕事のできない」ADの場合、周囲は大迷惑をこうむります。

 ある女性ADは、役立たずという意味で際立っていました。ルックスとスタイルが良くて、愛想も人並みですけど、要領が致命的に悪い。彼女の行動と判断は常に、Dの思惑と反対であるため、やたらと時間ばかりかかってしまいます。

 Dにしてみれば二度手間です。自分一人で仕事をした方が、どれほどスムースに進むことか。
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