テレビハラスメント

坂本 光陽

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新人ADの初仕事①

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 テレビ局の制作フロアで働いている人々は、それぞれにユニークなキャラクターをもっています。それが彼らのアイデンティティと持ち味であり、仕事を円滑に進めるために有効な武器でもあるのです

 あるチーフPが新人ADに向かって、
「このフロアには百人以上のスタッフがいる。一日でも早く、おまえの顔と名前を覚えてもらえ。そのためには、何をすればいいかわかるか?」と、訊きました。
「……毎朝、大声で名前を言って、あいさつするんですか?」
「違う」と、チーフPは言いました。「まず、おまえ自身の個性を見せろ! おまえの初仕事は先輩たちに、自分のキャラクターを売り込むことだ!」

 新人ADが頭を抱えました。自分のキャラクターって、一体なんだろう?
 制作フロアにいる先輩方を見渡してみると、確かに個性的なキャラクターぞろいです。

 ベテランで、いつも柔和なのに、撮影現場では一変して鬼軍曹、という男性。
 際立った出来の企画を連発して賞を独占するが、愛妻家で子煩悩の中堅男性。
 元AV監督の経歴をもち、なぜか数年毎にギックリ腰に悩まされる中堅男性。
 海外帰国子女なので、漢字が苦手で敬語も使えない、半人前のイケメン男性。
 黙っていれば美人なのに、いつも何かに怒りまくっている、既婚の中堅女性。
 あくまで我が道を行き、上司にも平気で意見する、貫禄充分のベテラン女性。
 缶やペットボトルのリサイクルが仕事と同様に重要、という既婚の若手女性。

 といった具合です。
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