15 / 36
迷走リサーチ②
しおりを挟む「豹堂さんのHPを拝見しました。除霊をなさっているんですね」
副業霊能者は口元から、輝く白い歯をこぼれ落ちた。
「常連客と口コミでやってくる依頼だけね。ほら、インチキ霊能者とかに頼むと、後々が大変でしょ。その点、俺は自己流だけど、コストはかかっても飲み代程度だし、言ってみりゃ人助け、ボランティアみたいなもんよ」
ふむふむ、あとは、徐霊の実力のほどを知りたいぞ。
その時、店に駆け込んできたホステス風の女性から、運よく貴重な意見を聞くことができた。
ホステスは兵藤につかみかかり、
「あんたの除霊、ちっとも効かないわよ! 家族全員、失業したり事故にあったりインフルエンザで寝込んだり、もう最悪なことばかり! このペテン師、私が買ってあげたアメ車、今すぐ返しなさいよ!」
いやぁ、修羅場ってヤツ、初めて見たな。
私は感心しながら、スナックを後にする。
リストの4、5、6人目……、いろいろあったけど、結局、全滅。
可能性の高い順に当たっているのに、残念ながら、成果ゼロです。
落胆しました。一旦モチベーションが落ちると、何をする気も起こらない。自然と後ろ向きになります。
やる気を出すために、妄想をかきたててみた。結城Pとのお忍び旅行をイメージしようとしたけれど、想像力が足らず、失敗に終わった。
私は事務所に戻って、パソコンの前でダラダラと過ごした。
イケメン霊能者を発掘できなければ、当然、叱責を受ける。
毒島Dへの言い訳はどうしようか? 頭の中はそればかり。
また、頭ごなしに叱られるのか。あーあ、気が重いよなぁ。
そんな時、真希さんから昼食に誘われた。週の半分は通っている、近くの定食屋だ。私が注文を終えると、真希さんは早速、話を切り出した。
「で、イケメンはどうなったの?」
「いやぁ、八方塞がりってやつです。どうすればいいでしょうか」
「どうすればいいでしょうかって、何を呑気な。ミルコ、あんた、自分のクビがかかってるの、わかってる?」
え、どういうこと? 思わず、キョトンとする私。
「やっぱり、気づいてなかったか。そこまで、鈍感だったとはね。毎日事務所にいて、周囲の空気とか、何も感じていなかったと。危機感とか、まったく感じてなかったと、いうわけね」
危機感って、まさか、クビになるってこと?
0
『夢みる乙女の5K仕事』の御閲覧をありがとうございました。もし、少しでも気になったのなら、どうぞ「お気に入り」登録をお願いいたします。お気軽に楽しんでもらえれば幸いです。ライト文芸大賞にも参加しておりますので、よろしければ応援のほど、お願いします。
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
純情 パッションフルーツ
坂本 光陽
ライト文芸
大学生の深水駿介は、マザコンを自覚している。幼馴染の香里にからかわれても気にしない。何といっても、女手一つで育ててくれたのだ。日頃はそっけない態度をとるものの、エリさんのことは心から尊敬している。そんな駿介に、とても気になる女性が現れた。作家であるエリさんの担当編集者,魅子さんである。彼女は7つも年上だけど、天然気味で、小動物のように可愛らしい。ただ、実は、片想いになることが運命づけられた相手だったのだ。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
テレビハラスメント
坂本 光陽
エッセイ・ノンフィクション
皆さんはテレビ業界について、どのようなイメージをお持ちですか? 僕はかつて、業界人の端くれでした。運よく、制作会社にひろってもらい、様々な現場を渡り歩いてきたのです。このエッセイは基本的に〈テレビ業界の裏側〉ですが、業界を舞台にした笑いあり涙ありのエピソード集でもあります。どうぞ、軽い気持ちで手にとって、楽しんでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる