裸のプリンスⅢ【R18】

坂本 光陽

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ラブ・スパイラルⅢ⑤

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 真由莉さんが「青い果実」と呼んだ彼女のすべてが僕の腕の中にある。

「僕はコールボーイとしてしか、チィちゃんを抱けない。それでもいいのか?」

 腹を決めるしかないのに、それでもエキスキューズを求めてしまう。我ながら呆れてしまう優柔不断さだ。

「チィちゃん、誓って、これ一回きりだ。約束できるか?」

 千鶴は少し考えて、コクンと頷いた。

「あと、もう一つだけ。今、僕の名前は『シュウ』だ。本名ではなく、『シュウ』と呼んでほしい」

 前にも言ったと思うが、千鶴はずっと僕を本名で呼んでいる。ただ、皆さんの混乱をさけるために、作中は『シュウ』で統一していたのだ。

 僕は改めて、コールボーイとして、千鶴に語りかける。

「千鶴さん、お客様には必ず、訊いていることがあります」

 いつものように丁重な言葉遣いを心がける。相手に距離を感じさせないように、やわらかな口調で訊ねた。

「どのようなセックスをお望みですか? やっぱり、『優しく抱いてほしい』かな」

 千鶴はコクンと頷く。いざとなると緊張してしまったのか、とたんに無口になった。

 挨拶代わりのキスをしながら、千鶴の身体を優しく抱きしめる。あまりにも繊細で、強く抱いたら折れてしまいそうだ。

 美しい肌に指先を這わせると、ピクンと身体を震わせる。

「どうしますか? 全部脱いでいることだし、このままベッドに直行しますか?」

 愛撫の手を止めて、千鶴の耳元で囁いた。

 だが、彼女は顔を伏せたまま、何も言わない。顔を覗き込むと、真っ赤になっていた。

「シャワーを浴びさせて」

 小声でそう言うと、バッグを拾って、バスルームに駆け込んでいく。さっきまで大人の女性として振舞っていたのに、初々しい女子高生の頃に戻ったみたいだ。

 僕にとっての森脇千鶴は、おさげ髪がよく似合う美少女だった。セーラー服姿の彼女を知っているだけに、妙な気分を味わう。

 このまま黙って帰ってしまいたい気持ちもあるが、コールボーイとしてはそうもいかない。

 やがて、千鶴がシャワーを終えて、戻ってきた。バスタオルを身体に巻いた姿で、恥ずかしそうに顔を伏せている。

 今度は僕がシャワーを浴びに行く。家で一度浴びているので、軽く流すだけで済ませた。バスタオルで身体を拭きながら、心の迷いの有無、身体の反応、つまり、バナナの具合を確認する。

 問題はない。いつも通りだ。コールボーイに徹するように、心を決めたせいだろう。

 腰にバスタオルを巻いた姿で、千鶴の待つベッドルームに足を踏み入れる。明かりはすべて消えていた。恥ずかしいのだろう。千鶴は布団の下に潜り込んでいた。

 僕は布団をめくり、彼女の横に身体を滑り込ませる。
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