裸のプリンスⅢ【R18】

坂本 光陽

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ラブ・スパイラルⅡ②

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 汗まみれで目が覚めた。季節外れの熱帯夜だったわけではない。僕の全身を濡らしていたのは、冷や汗だった。最悪な目覚めと言える。

 原因は言うまでもない。立て続けに起こったトラブルのせいだ。鏡を見れば間違いなく、女難の相が出ていることだろう。

 しかし、マヤさんの一件は結果を待ち続けるしかない。アフターピルが効能を発揮すれば、まず問題はないと思う。

 ただ、安心はできない。緊急避妊法は100%ではないし、もし、マヤさんがわざと、手渡した錠剤を飲まなかったとしたら……。

 いや、考えても仕方がない。無理やり飲ませることはできないのだから。

 もう一つのトラブルの方が相当に厄介だ。真由莉さんと一緒にいるところを千鶴に見られてしまった。おそらく、恋人同士の関係、と誤解しているだろう。

 千鶴にとっては寝耳の水の出来事だろうし、僕に二股をかけられるなど、思いもよらなかったはずだ。

 もっとも真由莉さんは僕の大事なお客様なのだが、千鶴はそもそも、僕がコールボーイであることを知らない。想像もしていないだろう。

 自分で言うのも変な話だが、千鶴は男性の理想像を僕の中に見ているような気がする。そんなものは幻想にすぎないのだが、恋愛経験に乏しい彼女には言ってもわかってもらえないだろう。

 僕自身、無意識のうちに、彼女の理想像を演じていたような気がする。ありのままの僕ではなく、どこか彼女に合わせていたのだ。

 だから、後ろめたかったし、彼女と会うことを苦痛に感じていた。昨日、千鶴と鉢合わせをした時、身体が引き裂かれるような想いを味わったのも、同じ理由からだ。

 こんなことになるなら、千鶴と再会した時に、ありのままの姿を見せておけばよかった。思えば、つまらない見栄を張ったものだ。自分のバカさ加減を痛感する。

 僕は清廉潔白ではない。イリーガルなコールボーイなのだ。千鶴とは本来、別世界の人間なのに。

 こうなったら、千鶴に真実を明かして、とことん愛想をつかされるのも一つの手なのかもしれない。

 ただ、そうすれば間違いなく、千鶴を傷つけてしまうだろう。それがいくら真実であったとしても、僕に対して抱いていた幻想をぶち壊しにするのだ。

 言ってみれば、千鶴は二重の意味で傷つくことになる。派手な外見とは対照的に、千鶴は潔癖症だ。僕がコールボーイをしていると知れば、当然のごとく怒るだろう。

 もしかしたら、泣かれてしまうかもしれない。そうなったら、北千住ルミネで再会した時の二の舞だ。これはもう、お手上げである。(「コールボーイの休日」参照)

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