裸のプリンスⅢ【R18】

坂本 光陽

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ラブ・スパイラル①

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 元泡姫のお姉様たちにとって、ソープランドで働いていた過去は、墓場までもっていく秘密だろう。元コールガールや元イメクラ嬢、かつて風俗嬢と呼ばれた方々や元AV嬢は皆、同じはずだ。

 家族や夫,恋人公認の風俗嬢がいないわけではないだろうが、やはり、少数派だと思う。誇りをもって仕事に励んでいたとしても、大っぴらにすべきことではない。性を売り物にする職業に、世間の眼は冷ややかだ。

 もちろん、コールボーイだって変わらない。だから、僕の友人知人たちは、僕の本当の仕事のことは知らないし、皆、フリーターだと思っているはずだ。

 再会したばかりの千鶴も、そう思っている。花火大会の日から、週一回のペースで彼女と会ってきただろうか。
基本的に、講義を終えた千鶴から電話がかかってくる。北千住駅近くの喫茶店で落ち合って、彼女の世間話に付き合うだけである。

 今度、一緒に映画を観ようか、という話も出たけれど、まだ実現はしていない。アクションホラーとラブロマンスのどちらを観るか迷いに迷って、結論が出なかったからだ。

 あと、これも言っておいた方がいいだろう。二度目のキスはまだである。皆さんの期待を裏切るかもしれないが、僕たちの関係は進展していない。

 花火大会の夜、僕たちは唇を交わした。雰囲気は悪くなかったし、普段の僕なら、その日のうちに関係を結ぶこともあったかもしれない。

 そうならなかったのは、千鶴が元ご近所さんという微妙な関係性のせいだろう。幼馴染にも似た独特な関係から、一気にセックスへと跳躍するには、かなりの勇気を必要とする。志保さんという、彼女の母親の顔がちらついたことも否定できない。

 コールボーイであっても、ハイティーンの女の子と無責任に関係を結ぶほど、愚かではないつもりだ。

 あと、状況は刻一刻と変化する。元常連さんの真由莉まゆりさんから久し振りに連絡を受けたことも、少なからず影響している。

「シュウくん、お久しぶり。今度、君に予約を入れたいんだけど、どうかな?」

 数ヵ月の空白期間などなかったようなメールだった。ちなみに、真由莉さんは元看護士のソープ嬢である。僕より少し年上で、小柄で童顔だけど、彼女とのセックスの相性は最高だった。(「情欲の雨に濡れて」参照)

「スケジュールがびっしりだと思うんだけど、今度の月曜日、もし都合がつくなら、いつでも、私のマンションまで来てください。また、若くて逞しい君に抱かれたいな。シュウくんが大好きな真由莉より」

 真由莉さんから、こんな丁重なメールを受け取るとは思いもしなかった。


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