黒き学び舎 ~僕たちの生首事件~

坂本 光陽

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中年クレーマー①

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 若草小学校には三つの門がある。西側にある最も大きな正門。東側には少し小さめな東門。どちらも大きな通りに接しているが、最も小さな南門はちがう。南門の前にあるのは、幅3mほどの小さな通りである。

 小学校に向かって右側の通りには、古いマンションと美容室が並んでいて、その隣にあるのが木造アパートだ。真っ白な洋館風だけど、近づいてみると、かなりのボロアパートであることがわかる。そのせいか、半分ほどは空室だった。

 一階の真ん中の部屋,103号室に住む中堀さんは、僕たちの間で有名人だった。決して良い意味ではない。小学校に対するクレーマーとして有名だったのだ。

 よく覚えているのは、一ヵ月ほど前にあった、社会科の校外実習での一件である。アパート前に出されたゴミの山をクラス全員で見学していた時、突然、中堀さんが飛び出してきたのだ。

「俺たち住人が出したゴミを勝手に見るんじゃねぇ」と、千堂先生を怒鳴りつけた。「こいつはプライバシーの侵害だろう。いつ誰に、そんな許可をとったのか、はっきり言ってみろ」

 中堀さんは坊主頭の中年男性だった。見るからに、目つきが怖い。まるで、因縁をつけるチンピラみたいだった。小学5年の僕たちが震え上がったのは言うまでもない。

 ただ、落ち度はこちらにあった。千堂先生は先方の許可もとっていなかったのだ。ウルマによると、本来ならアパートの大家さんや住民の方々に話を通しておくべきものらしい。

 その場は千堂先生が謝罪しておさまったが、数時間後、中堀さんは学校に乗り込んできて、校長先生に散々クレームを並べ立てたらしい。中堀さんの立腹はゴミの見学だけにとどまらなかったのだ。

「おたくの生徒が勝手にアパートの中に入ってくるんだよ。中庭を横切ったり廊下を走りまわったりして、とにかくうるせぇんだ。毎日とても迷惑している。小学校では一体、どういう教育をしているんだ」

 ボロアパートの中庭を横切ると、大通りに出るための近道になる。高学年の男子たちは平気で敷地内に出入りしていたらしい。それは住人の方々にとって、明らかな迷惑行為だった。
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