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生首の目撃談②

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 四時間目が済んで、僕が給食を食べ終わるのを待っていたように、ウルマが僕の席にやってきた。

「今朝の騒ぎの原因は一言でいうと、集団パニックだよ。集団ヒステリーって言い換えてもいい。ラジオ番組『宇宙戦争』の火星人襲来パニック、豊川信用金庫の取り付け騒ぎ、恐怖や不安というヤツは簡単に伝染する。大人だって他人の言葉に影響を受けるんだ。ましてや、小学生は影響を受けやすい年頃だからね」

 ウルマだって小学生のくせに、評論家のような口振りで言う。

「まぁ、冷静に考えれば、ごくありふれた、ただの悪戯だよ」
「僕にはそうは思えない。思い出しただけで気分が悪くなる」
「情けない。シロってマジ臆病者だな」

「いいや、これが普通の反応だと思う」
 僕はウルマの耳元に口を寄せて、
「ウルマが信じられないよ。あんな気持ちの悪い写真をどうする気だ?」

「どうもしない。極めて個人的な探求心さ。回収された写真は厳重に保管されて、二度と僕たちの目に触れることはない。だから、貴重なサンプルとして、手元においておきたかったんだ」

「やっぱり、信じられない。写真を見てしまった全員が、忘れてしまいたいはずなのに」
「ま、君に理解してもらおうとは思わない。ただ、これだけは言わせてもらう。シロは〈夜の校長〉の正体を知りたくないか?」
「〈夜の校長〉の正体? それってどういうこと?」
「文字通りの意味さ。この際、とことん調べてみようと思ってね。シロも一緒にやらないか?」

「うーん」僕は少し迷った。確かに好奇心はあるけれど、同時に怖い気持ちもある。
「やっぱり、シロには無理かなぁ」と、ウルマがせせら笑う「怖いのなら仕方ない」
「ああ、わかったよ。何を調べればいいんだ?」

 まんまとウルマの術中にはまった形である。

 僕たちの調査は一週間に及んだ。その結果、判明したことは、今回の生首事件には、実は伏線があったということ。この1ヵ月のうちに、〈夜の校長〉目撃談がいくつもあったのだ。
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