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生首の目撃談①
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僕たちのクラスの担任は、千堂先生という男の先生だ。
背が高くて、いつも優しい25歳。スポーツ万能でカッコよく、濃紺の上下スウェットがトレードマークだ。生徒の間では人気が高く、特に女子にはもてもて。一番の魅力は爽やかな笑顔だろう。
もっとも、千堂先生はホームルームの今、笑顔を封印していた。
「一体何があったのか、わかる者はいないか?」
誰ひとり答えない。千堂先生はクラス全員を見渡している。僕は運悪く、目が合ってしまった。
「城山はどうだ? 何か知っていないか?」
「わかりません。僕が登校した時には、もう校庭に写真がバラまかれて大騒ぎになっていました」と、正直に答えた。
「誰かの悪戯じゃないんですか?」と、ウルマがよく通る声で発言した。「生徒の可能性もありますけど、僕は外部の人間の仕業だと思います」
「ウルマ、何の根拠があって、そんなことを言うんだ?」
ウルマは平然と肩をすくめて、
「根拠などありませんよ。ただ、他人を驚かせて喜ぶような人間は校外にいくらでもいる、というだけの話です。そもそも、もし生徒の仕業だったら、教育指導をされている先生には都合が悪いんじゃないですか?」
ウルマはなぜか、千堂先生に反抗的な態度をとる。よほど相性がよくないのだろう。不思議に思って理由を訊ねたことがあるけれど、はぐらかされてしまった。
「ウルマは相変わらず、口の減らないな」
「まぁ、どちらにしても、くだらない悪戯ですよ」
千堂先生は苦笑しながら、
「ああ、まったくその通りだよ。おかげで、1年生と2年生を合わせて16人、気分が悪くなったらしい」
確かに、泣きじゃくっていた女の子が大勢いた。彼女たちは保健室で気持ちを落ち着かせてから、家族に迎えに来てもらい早退をすることになったらしい。
「もし、何か思い出したり妙なことに気づいたりしたら、遠慮なく先生に言ってくれ。それと、校庭に落ちていた写真はすべて回収する。もっている者は一枚のこらず提出してくれ」
僕たちは素直に提出し、たちまち教壇の上に写真の山ができた。僕がウルマの方を見ると、平気な顔で見返してきた。ウルマは写真を何枚か拾っており、少なくても3枚はもっているはずだ。僕はしっかり覚えている。
背が高くて、いつも優しい25歳。スポーツ万能でカッコよく、濃紺の上下スウェットがトレードマークだ。生徒の間では人気が高く、特に女子にはもてもて。一番の魅力は爽やかな笑顔だろう。
もっとも、千堂先生はホームルームの今、笑顔を封印していた。
「一体何があったのか、わかる者はいないか?」
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「わかりません。僕が登校した時には、もう校庭に写真がバラまかれて大騒ぎになっていました」と、正直に答えた。
「誰かの悪戯じゃないんですか?」と、ウルマがよく通る声で発言した。「生徒の可能性もありますけど、僕は外部の人間の仕業だと思います」
「ウルマ、何の根拠があって、そんなことを言うんだ?」
ウルマは平然と肩をすくめて、
「根拠などありませんよ。ただ、他人を驚かせて喜ぶような人間は校外にいくらでもいる、というだけの話です。そもそも、もし生徒の仕業だったら、教育指導をされている先生には都合が悪いんじゃないですか?」
ウルマはなぜか、千堂先生に反抗的な態度をとる。よほど相性がよくないのだろう。不思議に思って理由を訊ねたことがあるけれど、はぐらかされてしまった。
「ウルマは相変わらず、口の減らないな」
「まぁ、どちらにしても、くだらない悪戯ですよ」
千堂先生は苦笑しながら、
「ああ、まったくその通りだよ。おかげで、1年生と2年生を合わせて16人、気分が悪くなったらしい」
確かに、泣きじゃくっていた女の子が大勢いた。彼女たちは保健室で気持ちを落ち着かせてから、家族に迎えに来てもらい早退をすることになったらしい。
「もし、何か思い出したり妙なことに気づいたりしたら、遠慮なく先生に言ってくれ。それと、校庭に落ちていた写真はすべて回収する。もっている者は一枚のこらず提出してくれ」
僕たちは素直に提出し、たちまち教壇の上に写真の山ができた。僕がウルマの方を見ると、平気な顔で見返してきた。ウルマは写真を何枚か拾っており、少なくても3枚はもっているはずだ。僕はしっかり覚えている。
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