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リベンジ・ラブ⑧
しおりを挟む後は、人海戦術によって、すべての容疑者を調べ上げ、仕掛け人を特定したのだろう。レイカさんは以前、僕が厄介ごとを抱えていることを見抜いていた。相談にのってくれようとしていた。それでも僕が話さなかったのは、彼女に迷惑をかけたくなかったからだ。(「愛欲トラップ」参照)
「……本当にすいませんでした」情けないが、僕には謝ることしかできない。
「とりあえず、君には本日限りで、『キャッスル』を辞めてもらいます。荷物をまとめて、できるだけ遠くに逃げるのよ。ほとぼりが冷めるのを待ちなさい。あと、東京には二度と戻ってこない方がいい」
その言葉は冗談ではなさそうだった。
「そんなに、やばいんですか?」
「下手をすれば命取りになる。決して大袈裟じゃないわよ」
マープロの実態が企業舎弟であることは有名だ。社長はヤクザを自任しているし、元構成員の社員も少なくないらしい。
仲村誠サイドがお礼参りを仕掛けてくる可能性は低い、と考えていたが、こうなると話はまったく違ってくる。冷たい手で心臓を握られたみたいだ。
「あの、レイカさんも危ないんじゃないですか?」
彼女は首を横に振った。
「今はただ、自分のことだけを考えなさい。もし、パスポートがあるなら、海外でのんびりしてくるのも、一つの手だけど」
「いえ、パスポートはもっていないんです」
こんなことになるなら、身分証明書がわりに取得しておけばよかった。その時、ノックの音がして、一人の少年が入ってきた。どこか見覚えがあると思ったら、『キャッスル』の新人くんである。
「レイカさん、店の近くに怪しい車が二台停まっていました。見るからに、柄の悪そうな人たちです」
すでに尾行がついている、ということか。
「というわけだから、のんびりもしていられない。シュウくん、彼が君の身代わりになります。今すぐ従業員専用口から出ていきなさい」
「でも……」
「いいから行きなさい。時間を無駄にしないで」
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