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リベンジ・ラブ④
しおりを挟むしかし、動き出した以上、もう後戻りはできない。写真週刊誌にとって、大スクープはタイミングが重要だ。芸能関連だけでなく、国内の事故・事件、自然災害、アジア某国の核開発など、他のニュースに埋もれてしまわないように、編集部は細心の注意を払う。
僕やヒカルさんには、もう何もできない。ただ、Xデーを待ち続けるだけである。セクハラ激昂映像が公になれば、間違いなく仲村誠のタレント生命は断ち切られるだろう。そもそもの目的であるカズの復讐を果たすためにも、Xデーが待ち遠しくてたまらなかった。
ただ、期待と同時に不安もあった。何か重大な見落としやミスがあるのではないのか?
おそらく、僕は怖いのだろう。今回の一件は既に、自分の手を離れてしまった。多くの人々が関わっており、今となってはコントロール不能だ。やっぱり止めておこう、なんてことはできない。
今更ながら、マスメディアという化け物に恐怖を感じていた。かといって、後悔をしているわけではない。カズの復讐を果たすための渾身の一撃であるし、長峰さんやメイさんの悲しみや怒りを多くの人に知ってもらい、共有してもらいたい。
僕たちは始めてしまったのだ。予想外のことが発生したとしても、自分の責任においてすべて受け入れたいと思う。
ついに、Xデーが決定した。大きなニュースの間隙を縫って、僕たちの一撃が仲村誠を打ち砕くことになる。
ヒカルさんによると、写真週刊誌はタレントのスキャンダル記事を掲載する場合、掲載する旨を事前に所属事務所に通達するらしい。事務所は事態を重く受け止め、別のスキャンダルとの差し替えを求めてきたという。
しかし、仲村誠は元売れっ子とはいえ大物だ。ネームバリューがあり、文句なしに大スクープである。編集部は断固、拒否の姿勢を貫いた。
Xデーへのカウントダウンが始まった。この時、芸能界の裏側では、大きな騒動になっていたらしい。
まず、事務所が動いた。僕たちにとっても、それは想定外の行動だった。Xデーの直前に、仲村誠の無期限活動停止を発表したのだ。彼がMCを務めるテレビバラエティ番組と、パーソナリティを務めるラジオ番組は終了し、別番組に差し替えられるらしい。
仲村誠ファンはSNSを中心に、たちまち騒ぎ出した。事務所が活動停止の理由を「諸事情のため」と明らかにしなかったため、ネット上では薬物関係や淫行などが噂された。
マスコミも面白おかしく取り上げて、仲村誠を追い回したが、当の本人は雲隠れ。そんな状況の下で、Xデーになったのだ。
6ページを使ったスクープ記事によって、仲村誠の本性が暴露された。とりわけ、1ページをまるまる使った写真は、インパクト充分の迫力だった。
アイドルの傲慢で粗暴な表情は、テレビやラジオでは決して見せない代物だ。まさにケダモノである。彼が行ったセクハラとともに、粗野な本性は読者を驚愕させた。無期限活動停止の理由として、これほどの卑劣な犯罪は誰も想像しなかっただろう。
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