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淫らなアクトレス⑨

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 メイさんは仲村を罵倒し、不毛な関係を断ち切ることを宣言した。だけど、それでケリがつくなら苦労はない。

「あの時は確か、仲村の方が言ってきたのよね。相手の男に替われって」

 つまり、僕である。そう、面識はないものの、僕は電話で仲村と話したことがある。しかも、成り行きとはいえ、メイさんとの行為の一部始終を聞かせている。

 考えてみれば、奇妙な縁である。もし、カズの一件がなかったとしても、仲村さんとは決して仲良くはなれなかっただろう。

「その仲村さんのことで話があるんです」
「あら、もしかすると、それが今日の本題というわけ?」
「はい、その通りです」

 僕たちはミネラルウォーターで喉を潤す。セックスの後のひと時は、心身ともにリラックスしている。話を切り出すには頃合いだろう。

「実は、メイさんでないとできないことなんです」

「あれ以来、仲村とは会っていないよ」そう言って、彼女は苦笑する。「もう二度と会いたくないし、声だって聞きたくないからね」

「ええ、そうでしょうね。でも、同じ業界で働いているなら、一般人では知りようのない情報を耳にするんじゃないですか」

「……」
「僕が欲しいのは、仲村さんの最新情報です。今どこで何をしているのか?」

 そう言って、彼女の眼を覗き込む。

「あと、どうすれば、接触することができるのか?」
「ふぅん、サインが欲しいってわけじゃなさそうね」

「ええ、もちろん、理由については説明をさせてください。少しばかり長い話になりますが……」

 こうして、僕はカズの死に関する一部始終を語り始めた。現時点で判明していることについて。にわかには信じがたいことだろうから、決して誇張はせず、正確な言葉を心がけた。

 幸い、メイさんは無言で耳を傾けてくれた。

「……カズくんのことは知らないけど、シュウくんの大事な人だったの?」
「はい、彼を失ってから気づいたので、遅すぎたと後悔しているんですが」

「つまり、こういうこと? 仲村に罪を償わせたい。カズくんの復讐を果たしたい。そうなのね?」
「はい、まだ具体的には何も考えていないのですが、言葉にすればそうなります」

「ううん、言葉が全然足りないわよ。私の協力が欲しいなら、はっきり口にしてもらわないと」そう言って、悪戯っぽく睨んでくる。

「シュウくん、男の子でしょ」
「おっしゃる通りですね。ええ、わかりました」

 僕はしばし考えて、心の中を言葉にする。

「仲村さんの罪を暴き、しかるべき社会的制裁を受けさせる。それが僕の望みです」

 メイさんは笑顔で僕を引き寄せ、力いっぱい抱きしめてくれた。この時から、僕の復讐は始まったのかもしれない。

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