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Kファイルの衝撃③
しおりを挟むただ、付き合いを続けているうちに、次第に仲村さんの嫌な部分も見えてきた。人は皆、大なり小なり、表と裏を使い分けている。相手によって態度を変える。下々な者はぞんざいに扱って、何をしたって構わない。
電話のやりとりなどを聞いていると、そういう傲慢な一面が姿を現す。とりわけ芸能界は貧富の差が桁外れに大きく、上下関係が厳しいのだろう。一握りの売れっ子は王様だけど、下々の者はゴキブリ扱い。
現に仲村さんに絶対服従のゴキブリがいる。対外的には付き人だろうけど、扱いがひどすぎるので、下僕といった方がしっくりくる。
彼も仲村さんに抱かれていた。俺の目の前で裸にむかれ、犯されたこともある。真性のMで、仲村さんの言いなりだ。それなりに端正な顔をしているのに、仲村さんの前では羞恥心の貼りついた表情で、滑稽なほど卑屈な態度をとる。
俺だったら見切りをつけて、違う世界を目指すけど、そういったことを考える余裕すらないのだろう。
下僕くんとは、仲村さんの部屋で何度か鉢合わせたけど、ほとんど言葉は交わさなかった。ああいうタイプは大嫌いだし、距離をとった付き合いで充分だった。
しかし、下僕の眼には、俺はどう映ったのか? 同類か? それとも恋敵か?
まぁ、そんなことはどうでもいい。仲村さんのおかげで、俺の暮らしは好転した。警察の眼を警戒しつつ、食事を楽しむゆとりも出てきた。
だが、そういった余裕が、最悪な状況を呼び込む下地になったのかもしれない。コールボーイ時代から、芸能界とは馴染みがあった。人気のあるなしに関係なく、彼らは日常的にストレスを抱えている。それから解放してやることが、当時の僕の仕事だった。
弁護士や医者のような、守秘義務があることは言うまでもない。売れっ子芸能人のセックスやら寝物語に聞いた裏事情など、表に出せないネタはマスコミに高く売れる。
もちろん、一度も売らなかった。ハイエナ連中を喜ばす趣味はない。ただ、今後のことを考えれば、売ることも選択肢の一つだ。当分カネの心配をしなくても済む金額なら、という条件つきだけど。
元々金づるとして近づいたわけだが、仲村さんってゲスだと実感できる出来事があった。シュウさんも御存知のように、俺は筋金入りのフェミニストだ。すべての女性をマジ尊敬している。
だから、彼女たちの尊厳を踏みにじる行為を見過ごせない。それが例え、仲村さんにお持ち帰りをされたモデルやタレントであっても。傍から見たら、自業自得だという状況であっても。
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