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コールボーイの転機⑦
しおりを挟む発表することが決まっていないのに、これ以上固辞するのは奇妙な話だ。臆病者か自意識過剰みたいじゃないか。ただ、彼女の頼みを受け入れる代わりに、最低限のラインは引くことにした。
「わかりました。ただ、写真はNGでお願いします」
「うん、わかった。写真はあきらめましょう。じゃ、早速インタビューをさせて」
ヒカルさんはバッグを引き寄せて、筆記用具を取り出した。すっかり、仕事モードに切り替わったらしい。いささか残念だけど、僕も気持ちを切り替える。
彼女は僕の眼を見ながら、
「ぶしつけだけど、シュウくん、女性は好き?」
「ええ、もちろん好きですよ」
「若い女性と、年上の女性とでは?」
「その人によりますね。若くても魅力のない子はいるし、かなり年上でも素敵な人はいますよ」
「場数を踏んでいるような口振りね」
「そうでしょうか。普通だと思いますよ。カッコいい年上の女性に憧れていた時期もありましたから」
いうまでもなく、レイカさんのことだ。今でも時折り思い出す。彼女との最高のセックスを。
「女性経験の多さを誇るわけじゃありませんが、今の僕があるのは、僕の出会ってきた女性たちのおかげですよ」
「なるほど、もしかすると、私もその中に含まれる?」
「もちろんですよ」僕は笑顔で頷く。「僕は女性を心から尊敬しています。昔は無茶もしましたけどね」
「へぇ、訊きたい。その無茶って、例えばどんな?」
「高校時代はケダモノでしたね。それこそ手当たり次第に、毎日やりまくっていました」
「ふぅん、そうなんだ」本当のことなのに、笑顔で聞き流された。「でも、今のシュウくんは全然ちがうね。私には、とても優しかった」
「ある時期から、一方的なセックスは不毛だと思い知りましたからね。セックスは肉体のコミュニケーションですから、互いの信頼関係が不可欠だと思うんです。初対面のヒカルさんとなら尚更です」
「だから、私の身体を気遣って、いろいろ話しかけてくれたのね。やっぱり、シュウくんは優しいよ」
ヒカルさんが小さくくしゃみをした。
「汗が渇いて冷えたんですね。シャワーを浴びてきませんか? 時間はたっぷりあることだし」
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