1 / 82
コールボーイの転機①
しおりを挟むコールボーイの仕事が休止になると、とたんに時間をもてあました。
炊事,洗濯,掃除の家事一般を済ませると、することがなくなってしまう。買ったままで未読の本は数冊あるが、今は手に取る気になれない。
やはり、真由莉さんのAV転向はショックだった。セックスの相性において、彼女は唯一無二である。そんな彼女がAV男優たちに抱かれ、セクシーな姿をメディアにさらすのは、複雑な心境だ。
おそらく、可愛い顔を歪ませて、盛大に体液を噴出させることだろう。考えただけで、心穏やかにはいられない。僕は真由莉さんの作品を正視することはできないと思う。
そんな気持ちになるのは、もちろん嫉妬からだ。ただ、彼女を自分だけのものにしたいわけではない。正直にいって、独占欲はない。僕たちの関係は微妙だ。真由莉さんは恋人や彼女というより、同士といった方がしっくりくる。
セックスへの探求心や仕事を極めたい、という真摯な姿勢。現状に甘んじることなく、さらにステップアップを目指す彼女のことは、素直に尊敬できる。
『ピンク・マーメイド』で肌を合わせた時、僕は確かに感じた。彼女の情熱や不安、苛立ちといったもの。あれは、現状打破や向上心の現れだろう。
では、僕自身はどうなのか? 仕事に追いまくられてきた日々だった。ステップアップを考えたこともあるが、ついつい先延ばしにしてしまったような気がする。
ココナさんのように、自分の店をもつつもりはない。漠然とコールボーイと違う業界に関心はあるけれど、真っ当なサラリーマン生活を送る自信はない。免許や資格はないし、自慢できるスキルといえば、女性を抱くことだけだ。
レイカさんと出会って始めた仕事だけど、僕にとってコールボーイは天職だったといえるだろう。そんなことを考えながら、ルミネ北千住でウィンドウショッピングをしていた時のことだ。僕は久し振りにナンパされた。
いや、女性から声をかけたのだから、正確には逆ナンか。
「ねぇ、君のこと、とってもタイプなんだけど、よかったら私と遊んでくれない?」
僕の眼を見つめて、彼女は毅然と口にした。アラフォーの美人さんだった。知的な眼差しとセクシーな佇まいに僕は好感をもった。
「僕なんかでいいんですか?」冗談っぽく問い返してみる。
「君だからいいの。何度も同じことを言わせないで」僕の耳元に口を寄せて、「恥ずかしくなっちゃうから」
首筋が赤く染まっているのは羞恥心かららしい。そんな彼女を可愛らしく思う。少し考える振りをして、僕はにっこり微笑んだ。
「いいですよ。時間を持て余していたところです」
「何か買い物じゃなかったの? よかったら買ってあげるわよ」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる