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【3秒カクテル】②
しおりを挟む「私はいくつになっても、好きな男性のことを想ってドキドキしたいんですけどね」
「ミノリン、24になっても、乙女だねー」
洋子さんはケラケラ笑った。カチンときたけど、今回は多大なお世話になっているので、「へへーっ」と照れ笑いを浮かべておく。
洋子さんはフルーツサンドを食べ終えて、コーヒーを飲んでいる。彼女は大学のゼミの先輩にあたり、今は大手出版社で編集者をなさっている。
ちなみに、ここは銀座5丁目、銀座千疋屋のフルーツパーラー2階。
ビタミンが足りないな、と思っていたので、久しぶりにフルーツパフェを口にしている。ああ、ビタミンが全身に満たされていく。果糖の豊富さは心配だけど、いつもより多目にウォーキングすればいいや。
さて、すでに【銀時計】の店構えとバーテンダーは完璧だ。あとは、お店のことを多くの皆さんに知ってもらうだけ。つまり、広告宣伝だ。私はまず、祖父の住所録を頼りに、祖父の知人友人関係者、常連客の方々に案内状を出すことにした。
一枚一枚手書きのメッセージを書いている時、ふと閃いた。【銀時計】の復活をアピールするのに、最も効果的な方法。それは、影響力をもつ専門家を御招待してお墨付きをもらうことだ。我ながら、グッドアイデア。
私は早速リストアップを行い、雑誌編集者である洋子先輩に相談した、というわけだ。
ふぅ、長い回り道をして、ようやく話を戻すことができた。
「それにしても、夢物語だったミノリンのバーが、本当にオープンしちゃうとはねぇ」
「開店準備に本格的にとりかかってから、あっという間でした。自分でも夢みたいです」
「ねぇ、そもそものきっかけは何だったの?」
「3.11。東日本大震災ですよ」私は即答した。「あの時、嫌というほど思い知らされました。想像もつかないような最悪な出来事が起こりうるんだ。それは明日起こるかもしれないし、1時間後かもしれない。そう考えたら、人生観が変わりました。やりたいと思ったことは、思い切ってやってみよう。何とかなるかもしれないって」
「事実、何とかなったわけだしね。ミノリン、大したもんだよ」
「へへーっ」もう一度、照れ笑い。
話を広告宣伝に移る。
高名な専門家の方々は、とても御多忙らしい。プレ・オープンの日に、【銀時計】まで足を運んでいただくことは難しいかもしれない。もし来ていただけても、先代の【銀時計】と雪村隆一郎の名前を御存じなかったり、無関心であったりすれば、あまり効果は期待できない。
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