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古びた鍋
しおりを挟む台所の暗がりに、古びた鍋がある。
亡くなった母の嫁入り道具だ。
高度成長期までは現役だったが、昭和が終わる前に引退。
以来、蓋は閉じられたまま。
母は捨てるに捨てられず、平成になっても置かれたまま。
令和になったことだし、思い切って蓋を開けてみた。
鍋底から見上げているのは、老いた母だった。
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