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心はヌーディスト②
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「まぁ、話は水掛け論になったけど、元々借金そのものがないんだから、すぐに疑いは晴れるはず。そう思っていたんだけど、当局の狙いは別にあったらしい」
「何が狙いだったんですか?」
「PCがハードディスクごと押収された。たぶん、顧客リストだと思う」
つまり、僕たちキャストのお客様名簿である。
「それって、お客さんに迷惑がかかることはないでしょうか?」
「警察が直接、一人ひとりに連絡する可能性は低いと思う。でも、『ナイトジャック』休業の件も含めて、お客様には伝えておいた方が賢明だろうね」
「わかりました。やっておきます」
僕にはもう一つ、気になることがあった。
「あの、もしかしたら、カズの件と関係があるんでしょうか?」
警察からカズの遺体確認の連絡あった時、まずココナさんに一報を入れた。お互い警察に良い印象はもっていないのに、「少し嫌な予感がする」という彼女の忠告を無視したのは、ほかならぬ僕である。
「どうだろうね。関係があるかもしれないし、ないかもしれない。確かなことは、『ナイトジャック』は警察の考え一つで吹き飛んでしまう、ということだ」
最も気になることも訊いてみる。
「逮捕とか、ないですよね」
「こんなことでシュウを逮捕していたら、全国のコールボーイが一人もいなくなるよ」
「いえ、僕のことじゃないです。ココナさんが逮捕されないか、心配なんですよ」
「はは、ありがとう。一晩ぐらいブタ箱に泊ってきてもよかったけど、こうして戻ってこられたんだ。心配は無用だよ」
ココナさんの明るい笑い声を聞くと、少し照れ臭くなった。思春期の息子が母親を思いやる気持ちに似ているかもしれない。いや、年齢的に母親は失礼か。
『キャッスル』時代にお客様の一人として知り合ったけど、『ナイトジャック』に誘っていただいてから、ココナさんにはお世話になりっぱなしである。これまで問題がなかったのは、彼女の経営力によるところが大きい。
「営業再開はいつ頃になりそうですか?」
「さぁ、今はまだ何とも言えないね。当分は休業のつもりでいてくれる? そうだ。早めの盆休みだと思って、真由莉とバカンスにでも行って来たら?」
ココナさんは僕と真由莉さんの関係を承知している。そもそも、ココナさんは吉原の元ソープ嬢であり、真由莉さんの元同僚なのだ。
ただ、真由莉さんは多忙なはずだ。休みが合えばいいけど、なかなかそうはいかない。そういえば、室内デートで中座した件をうっかり忘れていた。真由莉さんに約束した埋め合わせがまだだ。後で、連絡しておこう。(裸のプリンスⅣ「やわらかな唇」参照)
「何が狙いだったんですか?」
「PCがハードディスクごと押収された。たぶん、顧客リストだと思う」
つまり、僕たちキャストのお客様名簿である。
「それって、お客さんに迷惑がかかることはないでしょうか?」
「警察が直接、一人ひとりに連絡する可能性は低いと思う。でも、『ナイトジャック』休業の件も含めて、お客様には伝えておいた方が賢明だろうね」
「わかりました。やっておきます」
僕にはもう一つ、気になることがあった。
「あの、もしかしたら、カズの件と関係があるんでしょうか?」
警察からカズの遺体確認の連絡あった時、まずココナさんに一報を入れた。お互い警察に良い印象はもっていないのに、「少し嫌な予感がする」という彼女の忠告を無視したのは、ほかならぬ僕である。
「どうだろうね。関係があるかもしれないし、ないかもしれない。確かなことは、『ナイトジャック』は警察の考え一つで吹き飛んでしまう、ということだ」
最も気になることも訊いてみる。
「逮捕とか、ないですよね」
「こんなことでシュウを逮捕していたら、全国のコールボーイが一人もいなくなるよ」
「いえ、僕のことじゃないです。ココナさんが逮捕されないか、心配なんですよ」
「はは、ありがとう。一晩ぐらいブタ箱に泊ってきてもよかったけど、こうして戻ってこられたんだ。心配は無用だよ」
ココナさんの明るい笑い声を聞くと、少し照れ臭くなった。思春期の息子が母親を思いやる気持ちに似ているかもしれない。いや、年齢的に母親は失礼か。
『キャッスル』時代にお客様の一人として知り合ったけど、『ナイトジャック』に誘っていただいてから、ココナさんにはお世話になりっぱなしである。これまで問題がなかったのは、彼女の経営力によるところが大きい。
「営業再開はいつ頃になりそうですか?」
「さぁ、今はまだ何とも言えないね。当分は休業のつもりでいてくれる? そうだ。早めの盆休みだと思って、真由莉とバカンスにでも行って来たら?」
ココナさんは僕と真由莉さんの関係を承知している。そもそも、ココナさんは吉原の元ソープ嬢であり、真由莉さんの元同僚なのだ。
ただ、真由莉さんは多忙なはずだ。休みが合えばいいけど、なかなかそうはいかない。そういえば、室内デートで中座した件をうっかり忘れていた。真由莉さんに約束した埋め合わせがまだだ。後で、連絡しておこう。(裸のプリンスⅣ「やわらかな唇」参照)
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『裸のプリンスⅣ』の御閲覧をありがとうございました。シュウの物語・第4弾はいかがだったでしょう。もし、お気に召したのなら、「お気に入り」登録をお願いいたします。どうぞ、お気軽に楽しんでください。前作の『裸のプリンス』、『裸のプリンスⅡ』、『裸のプリンスⅢ』『愛のしたたる果実【R18】』、『ブラックアイドル【R18】』も合わせて、よろしくお願いいたします。
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