上 下
41 / 73

クールでジューシィ⑤

しおりを挟む
「シュウくん……、さっきの、お願いしてもいいかしら」

 それが何のことなのか、すぐにわかった。僕は軽く頷くと、了解の意味で彼女と唇を交わす。

 彼女の身体に繊細な愛撫を加えながら、今度は身体をずらし下げていく。身体を密着させたまま、少しずつ、少しずつ。唇で愛撫する場所も合わせて下げていく。

 山本さんは恥ずかしさで、両手で顔を覆ってしまう。僕の尖らせた舌先がザクロの上の敏感な果粒をとらえた時、彼女の身体は大きく跳ねた。

 そして、信じられない言葉を口にした。

「ああっ、カズくん」

 まさかとは思うが、それは僕の知っているカズなのだろうか?

 山本さんは自分の失言に気づいて、身体を硬くしていたけど、僕はさりげなく聞こえなかった振りをした。

 カズとは想い人かもしれないし、元彼氏の可能性だってある。僕が正月の夜を一緒に過ごした、あのカズだけではない。

 そんなことを考えながら、最も敏感な果粒を丹念に愛撫する。

 一般に「クリ×××」と呼ばれるスポットだ。舌先で刺激を与えると、一回り大きくなった。少し形状は独特だった。尖っているので、小さな角のように見える。

 山本さんは、可愛い悲鳴が上げていた。身体を捩ろうとするけれど、僕は両手で彼女の太腿を押さえて逃さない。

 舌先で転がすだけでなく、唇で挟むと、息を吸い込むように強く吸ってみる。

 甲高い悲鳴が上がった。山本さんは、激しい快感に全身を貫かれたのだろう。僕の頭を両手でつかみ、下半身を何度も跳ね上げていた。同時に、ザクロから体液が零れ落ちる。

「いやっ、いやっ」

 心地よい声を聴きながら、一滴残さず舐めとって差し上げた。

「ごめんなさい。本当にごめんなさい」

 山本さんは両手で顔を覆ったまま、むせび泣いていた。どういう意味なのかわからないけど、かなり感情が高ぶっているようだ。

 僕は舌先の愛撫をやめて、彼女の隣に身体を横たえた。ほっそりとした身体を優しく抱きしめて、彼女の言葉を粘り強く待つ。

 やがて、ポツリポツリと話し始めた。とても驚いたことが二つある。

 まず、山本さんが口にしたカズとは、やはり僕の知っているカズだということ。山本さんは昨年の夏に、カズと知り合ったという。場所は六本木のクラブ。カズはコールボーイを辞めて、悪い仲間と〈義賊ごっこ〉をしていた頃だろう。

 正月に彼が語ったことによると、振り込め詐欺グループの事務所を襲撃していたらしい。その後、グループから抜けようとして、裏切り者扱いを受け、警察に犯罪者として売られることになる。
しおりを挟む

処理中です...