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クールでジューシィ①
しおりを挟む初めてのお客さんは基本的に、本名ではなく仮名を使う。佐藤さんとか鈴木さんとか、ありふれた名字が多い。今日、お会いする山本さんも同様である。
僕たちは、上野駅公園口の改札前で待ち合わせをした。時間前に姿を現した山本さんは、一言でいうと、クールビューティ。職場ではおそらく、上司から厚い信頼を受けている才媛だろう。
背筋がピンと伸びていて、メイクにもスタイルにも一分の隙もなかった。ココナさんのアドバイスにしたがって、ブランドスーツを着てきて正解だった。
「はじめまして、今日はお会いできてとてもうれしいです」
僕は笑顔で彼女に挨拶をすると、はにかんだ笑顔と会釈が返ってきた。
ココナさんから、20代の公務員と聞いていたけれど、とても落ち着いて見える。真面目そうな佇まいから、学校の先生だろうか? お役所務めかもしれない。
僕たちは肩を並べて歩き始める。不忍通りに入ると、目的地まで10分とかからない。『ナイトジャック』が一室を所有しているワンルームマンションだ。
フローリングの上にあるものは、キングサイズのベッドとクローゼットのみ。誰かが暮らしているわけではないので、生活感はまったくない。
お客様の中には、ラブホテルに抵抗感のある方もいる。ここはそんな方のためのスペースである。窓を開け放って空気を入れ替えてから、エアコンのスイッチを入れた。
山本さんは無口な方だった。僕が一方的に話して、二言三言返ってくる感じ。ただ、何となくわかった。期待と不安の入り混じった緊張感に包まれているのだろう。
彼女が求めているのは、アバンチュールというほどではないが、若い男と過ごす非日常な時間。心底楽しんでいただけるよう、最高級のサービスを心がけようと思う。
僕たちは代わる代わるシャワーを浴びて、プレイの前に身体を洗い清めた。心地よい緊張感を味わいながら、カーテンと閉め切った薄暗い部屋で向き合う。
小鳥がついばむようなキスを交わし、身体をぴったりと密着させる。
山本さんは無口だけど、身体はとても雄弁だった。たちまち呼吸が弾みだし、目元とデコルテラインが赤く染まる。二つの大きな瞳は、僕を求めていた。
「失礼します」
僕は彼女に笑いかけ、身体に巻きつけたバスタオルを解いた。見事に成熟した身体が露わになる。真っ白な肌が赤みを帯びていく様は、たまらなくセクシーだった。
「とてもきれいですよ、山本さん」
そう言うと、彼女は顔を伏せて、僕の胸にしがみついてきた。屹立したバナナが弾みで、彼女の下腹に当たってしまう。
山本さんがハッとした表情を浮かべた。
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