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悦楽のアクトレス⑨

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「ああっ、ダメ、もうダメっ」

 メイさんがケダモノのように叫ぶ。言葉とは裏腹に、彼女も下から腰を打ちつけてくる。少しでも激しく奥底を打つように。少しでも快感が高まるように。

 たちまち、二度目のエクスタシー。それでも、僕の腰を止まらない。しっかりと力強く、一定のリズムを刻み続ける。

 メイさんはリズムに合わせて、セクシーに身体をくねらせた。

「ええっ、嘘でしょ!? シュウくん、嘘っ!」
「メイさん、止めますか? 止めてほしいですか?」

 僕の問いかけに、彼女は首を横に振る。

「もっと。お願いだから、もっと……」

 メイさんは最大限に身体を開いて、僕を受け止めてくれる態勢をとる。

「わかりました」

 僕はリミッターを外して、ケダモノモードに入った。腰の回転速度を上げて、突き上げの荒々しさを高めていく。激しく腰を使いながら、メイさんの眼を見つめる。

 やはり、告白は相手の眼を見て伝えなければならない。

「メイさん、大好きです。心から愛しています」
「私も、シュウくんが好き。大好きっ」

 初めてという設定はどこかに行ってしまった。僕たちは何よりも、目の前の愛を優先する。

 メイさんのお好みに応じて、僕たちは激しく愛し合う。バナナとザクロの狂乱。クライマックスはケダモノのように、荒々しくむさぼり合う。互いの身体を求め合う。

 メイさんが身体をよじって、エクスタシーに達した。それに合わせて、僕はトリガーを引き絞る。

 僕たちは汗まみれで抱き合い、しばし快楽の余韻に浸った。バスタオルをとって、メイさんの身体を優しく拭う。後戯も兼ねているので、水蜜桃やチェリーの愛撫も忘れない。

 沖縄の乾いた空気のおかげか、きれいな肌はすぐサラサラになった。メイさんは満面の笑顔を浮かべてくれた。大輪の花のような表情に、僕は充実感と達成感を味わう。

「ふふっ、上書き成功。私の初めての男は、シュウくんだからね」

 そう言って、頬にキスをしてくれた。

「楽しんでいただけましたか?」
「ええ、とっても。すっかりリフレッシュしたよ」

 僕たちは笑顔で、唇を交わした。

 仕事が詰まっていなければ、のんびりバカンスができるのに、残念ながら僕は多忙な身の上だ。翌日、朝一番の飛行機にとびのると、那覇で乗り換えて、昼過ぎには東京に帰ってきた。

 気温が10度以上も低いことには閉口したけれど、ひと月も経てば春になる。常連のお客様の中と一緒にお花見をする企画を立ててみようか。

 そんなことを考えながら、僕はタクシーにゆられていた。
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