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逝けない女Ⅱ⑨

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 しばらく横になって、体力の回復を待ってから、代わる代わるにシャワーを浴びた。

 後で知ったのだけど、マリコさんは現役の柔道選手だった。ネットニュースによると、東京五輪を視野に入れた有望選手らしい。

 セックスという僕のテリトリーだから、かろうじて相手を務められた。もし、柔道だったら瞬殺だったろう。

 何はともあれ、マリコさんには楽しんでいただけたようだ。

「シュウ、また会ってくれる?」
「はい、喜んで。いつでも御連絡ください」

 彼女は恥ずかしそうに、次回の御指名を約束してくれた。来年、といっても来週から2017年だ。

 再びの激戦に備えて、じっくり身体を鍛えておくことにしよう。マリコさんの御要望で、僕が先にレンタルルームを出た。

 忘年会帰りの人波をぬいながら、大通りに向かう。運よく、すぐにタクシーを捕まられた。後部座席に腰を下ろすと、ドッと疲れが出た。泥のように眠りたい気分である。

 でも、その前に連絡である。ココナさんに職務完了の一報を入れた。

「お疲れ様。さすが、シュウね。今しがたマリコさんから、お褒めの言葉をいただいたわよ」
「ココナさん、どうしてスペシャルなお客様だって言ってくれなかったんですか?」
「人間離れをした体力の持ち主だってこと? それとも、最高の名器の持ち主だってこと?」

 ココナさんの口調は笑いを含んでいた。僕は苦笑するしかない。

「まぁ、前もって言われていたら、怖くていけなかったかもしれません」

「またまたぁ、シュウに謙遜に似合わないわよ。とりあえず、今年の仕事は完了。年末年始はゆっくり休みなさい。シュウ、来年もよろしくね」

 通話を終えたとたん、僕は睡魔に負けた。根津のマンションに帰り着くまで、気持ちよく熟睡した。

                   *

 年末年始、正月といっても、僕の場合、ほとんど日常生活に変わりはない。

 年越しそばやお雑煮、おせち料理とは無縁だ。里帰りはしないし、年賀状書きもしない。近所の根津神社に初詣ぐらいはするが、特別なことは何もない。

 だけど、思わぬ来訪者のせいで、忘れられない正月になった。別れ方が最悪だったので、再び会えるとは思わなかった。相変わらず端正なルックスだが、表情や仕草に荒んだものを感じさせる。

 初詣から帰ってきた僕をドアの前で出迎えたのは、一年前に、僕を拘束して玩具にしたカズだったのだ。
(『裸のプリンス』「溺れる身体」参照)

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