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逝けない女Ⅱ⑤

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「ああっ、シュウっ」

 彼女の両腕で締めつけられ、上体に激痛が走る。一瞬、呼吸が止まった。それでも、僕はプロだ。

「マリコさん、あなたは最高です」

 彼女の耳元で囁きながら、僕は腰を使う。全身を躍動させて、ダイナミックにバナナを打ちつける。とてつもない快感に翻弄された。無我夢中だった。

 ありったけの愛情を全身全霊で注ぎ込む。もちろん、マリコさんの中に。激しく、熱い流れが、バナナの先端からほとばしる。

 快感が全身を駆け抜けていった。僕は両手をベッドについて、呼吸を整える。マリコさんは眼を閉じて、断続的に身体を捩っていた。きれいに割れた腹筋も震わせている。

 幸い、僕の暴発より少し前に、彼女は達したらしい。マリコさんは息を吐いた後、僕にしがみついてきた。

 またもや、強い力で締め上げられ、身体に激痛が走る。だが、これは愛情表現なのだから、甘んじて受けねばならなかった。

 僕たちは無言で抱き合った後、ベッドに並んで横たわった。シーツに汗が染み込んでいく。

 身体が冷えて風邪をひいてはいけない。僕はかたわらのバスタオルをとると、彼女の身体を優しく拭う。

「私がKOされたの、シュウが初めてだよ。本当によかった」

 シミジミとした口調だった。

「光栄ですね。ありがとうございます」

「お礼を言うのはこっちの方よ」マリコさんは笑顔を浮かべて、僕の頬にキスをした。「こんなに良かったの、本当に初めて。他の男どもと全然ちがう」

 そう言って、今度は唇を交わす。

「ねぇ、もう一回いいよね」

 彼女はフワリと僕の腰にまたがった。早くも体力を回復したらしい。流石さすがアスリートといったところか。

 初めてのエクスタシーで解放感を得たせいだろう。マリコさんは素敵な笑顔を浮かべていた。鍛え抜かれた身体が光り輝いている。

「シュウ、もっと楽しませて」

 その言葉通り、彼女は貪欲で積極的だった。腰の位置を僕の太腿の方にずらし、僕の腹に上体を重ねてきた。

 僕の汗ばんだ胸に顔を近づけて、舌先でチェリーを弄び始める。彼女の肩に触れようとすると、やんわりと外された。僕の唇を奪いながら、両手首をベッドに押しつける。ただ、それだけで動きを封じ込まれてしまった。
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