上 下
3 / 73

逝けない女③

しおりを挟む

 とりあえず、不安を拭いさることが肝要だ。

「梨美さん、大丈夫です。リラックスしてください」

 僕はにっこり微笑む。優しく唇を交わしながら、二の腕に指先を這わせる。できるだけ、繊細なタッチを心がけた。

 羽毛を滑らせるようなイメージだ。相手の信頼を勝ち取ることは、コールボーイの必須条件だ。未熟なセックスしか経験したことにない女性には、とりわけ重要になる。

「梨美さん、とても肌がきれいですね」

 耳元で甘く囁くと、彼女の身体から力が抜けた。キスと交わしながら、指先で感じるところを探っていく。

 先程、梨美さんはくすぐったがったけれど、それはまだ未開発だからだ。くすぐったさと快感は紙一重。触れるか触れないかのシルキータッチで、美しい肌をサーチする。

「……んん」

 梨美さんが初めて、甘い悲鳴を上げた。体温が上がってきたのが指先でわかる。

 もっと気持ちよくなってもらいたい。梨美さんが望まないなら、今日はインサートを見送ってもいいだろう。

 もちろん、コールボーイの立場上、した方がいいのだけど、そのニーズがないのなら無理強いはしない。それが、僕のスタンスだ。ただ、今まで味わったことのない快感を体験していただきたい。

 コールボーイもサービス業の一種だ。僕だからこそ味わえたサービス、というものを追及してみたい。

 首筋や脇の下、皮膚の薄い部分を重点的にシルキータッチで責めた。優しく、できるだけ優しく。ああ、じれったい、と思わせるほどに。

 僕の腕を掴んでいる手に力が入った。どうやら、脚が感じるようだ。僕は身体を下にずらして、足の指先から太腿の付け根まで、ゆっくりと指先を這わせる。往復を丁寧に何度も繰り返す。

「ああ……」

 甘い吐息がもれた。身も心も充分にほぐれたら、僕の指先は本丸に向かう。もちろん、すっかり潤み切ったザクロである。

 指先を間近に近づけても、脚を閉じたりする気配はなかった。梨美さんは僕の腕にしがみついて、ブルブルと身体を震わせている。

 梨美さんの蜜は、予想以上に溢れていた。ザクロの周辺どころか、太腿まで濡らしている。

「梨美さん、僕の指が気持ちよかったんですね」

 明るい調子で囁くと、恥ずかしそうにコクンと頷いた。僕は人差し指と中指の先に、彼女の蜜をからめていく。

 これほど濡れたのは初めてなのだろう。梨美さんは頬から耳まで真っ赤に染めて、腰をモジモジさせている。

 愛撫を行う前に、ザクロの入口に沿うように中指をおいた。デリケートな部分に当てただけである。それでも、敏感に反応した。
しおりを挟む

処理中です...