8 / 18
男が欲しい夜
思いがけない誘い⑦
しおりを挟む
「エリさん、話の腰を折るようで悪いけど、どこかに場所を移さない? もし、お腹がすいているなら、食事とか」
「何いってるの。お腹なんか全然すいてない。それともスズキくん、ペコペコなんですか?」エリは吐き捨てるように言い放った。
話の腰を折られたのが、そんなに腹立たしかったのか。スズキは呆然としていたが、エリが次いで口にした言葉と比べたら、はるかに想定内の部類だった。
「上に部屋をとってあるの」そう言って、エリはルームキーを掲げた。「スズキくんのお腹がすいているなら、ルームサービスをとればいいからさ」
この時、スズキの予定は大幅に狂った。
さりげない会話でエリをリラックスさせ、食事に誘うつもりだったのに。イタリアンと中華に和食、すでに複数の店舗に予約済みだ。エリの好みに訊いて、その店で一緒の時間を過ごす。さらに打ち解けたところで、薄暗いバーに行き……。定番かもしれないが、こういった面倒くさい段取りを踏むのは、男の義務である。そう思っていた。
しかし、その予定はエリの言葉によって、大幅に短縮された。食事もバーもすっ飛ばして、いきなりのホテルである。しかも、有名ホテルの一室。最低料金でも1万円は下らない。
そもそもエスコートするはずが、これでは赤っ恥である。いくら結果オーライとはいえ。
「スズキくん、どうしたの? ほら、行くよ」
スズキがあれこれと思いを巡らせているうちに、エリはさっさと支払いを済ませていた。
今、この場を仕切っているのは、明らかにエリだった。
「何いってるの。お腹なんか全然すいてない。それともスズキくん、ペコペコなんですか?」エリは吐き捨てるように言い放った。
話の腰を折られたのが、そんなに腹立たしかったのか。スズキは呆然としていたが、エリが次いで口にした言葉と比べたら、はるかに想定内の部類だった。
「上に部屋をとってあるの」そう言って、エリはルームキーを掲げた。「スズキくんのお腹がすいているなら、ルームサービスをとればいいからさ」
この時、スズキの予定は大幅に狂った。
さりげない会話でエリをリラックスさせ、食事に誘うつもりだったのに。イタリアンと中華に和食、すでに複数の店舗に予約済みだ。エリの好みに訊いて、その店で一緒の時間を過ごす。さらに打ち解けたところで、薄暗いバーに行き……。定番かもしれないが、こういった面倒くさい段取りを踏むのは、男の義務である。そう思っていた。
しかし、その予定はエリの言葉によって、大幅に短縮された。食事もバーもすっ飛ばして、いきなりのホテルである。しかも、有名ホテルの一室。最低料金でも1万円は下らない。
そもそもエスコートするはずが、これでは赤っ恥である。いくら結果オーライとはいえ。
「スズキくん、どうしたの? ほら、行くよ」
スズキがあれこれと思いを巡らせているうちに、エリはさっさと支払いを済ませていた。
今、この場を仕切っているのは、明らかにエリだった。
0
拙作『天使の穴には牙がある【R18】』を読んでいただき、本当にありがとうございます。どうぞ、お気軽に御覧ください。「お気に入り」登録や御感想を聞かせていただければ幸いです。『裸のプリンス【R18】』と『ブラックアイドル【R18】』も合わせて、よろしくお願いいたします。ホラー・ミステリー大賞に参加しますので、合わせてお願いします。
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

ママが呼んでいる
杏樹まじゅ
ホラー
鐘が鳴る。夜が来る。──ママが彼らを呼んでいる。
京都の大学に通う九条マコト(くじょうまこと)と恋人の新田ヒナ(あらたひな)は或る日、所属するオカルトサークルの仲間と、島根にあるという小さな寒村、真理弥村(まりやむら)に向かう。隠れキリシタンの末裔が暮らすというその村には百年前まで、教会に人身御供を捧げていたという伝承があるのだった。その時、教会の鐘が大きな音を立てて鳴り響く。そして二人は目撃する。彼らを待ち受ける、村の「夜」の姿を──。
まばたき怪談
坂本 光陽
ホラー
まばたきをしないうちに読み終えられるかも。そんな短すぎるホラー小説をまとめました。ラスト一行の恐怖。ラスト一行の地獄。ラスト一行で明かされる凄惨な事実。一話140字なので、別名「X(旧ツイッター)・ホラー」。ショートショートよりも短い「まばたき怪談」を公開します。


赤い部屋
ねむたん
ホラー
築五十年以上。これまで何度も買い手がつきかけたが、すべて契約前に白紙になったという。
「……怪現象のせい、か」
契約破棄の理由には、決まって 「不審な現象」 という曖昧な言葉が並んでいた。
地元の人間に聞いても、皆一様に口をつぐむ。
「まぁ、実際に行って確かめてみりゃいいさ」
「そうだな……」

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる