5 / 18
男が欲しい夜
思いがけない誘い④
しおりを挟む
「うん、そうだね。あの頃は自信が全然なかったし、恥ずかしくて、お世辞なんて口にできなかったから」
「あ、お世辞だったんだ」」
「いや、違うよ。エリさんがきれいなのはマジだから」
「ふふ、マジですか」エリは笑い続けていた。
大学生の時、スズキはこれといった特徴のない男だった。女性に対しては、あくまで優しく、謙虚でありたいと思っていた。それは裏返せば押しの弱さであり、単に勇気がなかっただけだった。
スズキは社会人になってから、自分の考えを伝えることの重要性を思い知らされた。対人関係において遠慮や謙虚さは、何の役にも立たない。相手に笑われても否定されても、自分というものを表に出していく。
一言でいうと、自己PR。相手への印象付けが大切なのだ。仕事の場でも、魅力的な女性の前でも。
「スズキくんの勤務先って、どこだっけ?」
「リバティパッケージといって、紙袋や紙箱を製造している。あと、段ボールも」
「ふうん、聞いたことないなぁ」
「テレビCMをガンガン流すメーカーじゃないからね。うちの得意先は一般消費者じゃなくて、百貨店量販店や、食品や家電のメーカーさんだから。でも、一部上場なんだよ。四季報でも優良企業って褒められている」
スズキの話に興味がなかったのか、話が長すぎたのか、エリは欠伸をかみ殺したような表情をしていた。どうやら、自己PRの方向性を間違ったらしい。
「あ、お世辞だったんだ」」
「いや、違うよ。エリさんがきれいなのはマジだから」
「ふふ、マジですか」エリは笑い続けていた。
大学生の時、スズキはこれといった特徴のない男だった。女性に対しては、あくまで優しく、謙虚でありたいと思っていた。それは裏返せば押しの弱さであり、単に勇気がなかっただけだった。
スズキは社会人になってから、自分の考えを伝えることの重要性を思い知らされた。対人関係において遠慮や謙虚さは、何の役にも立たない。相手に笑われても否定されても、自分というものを表に出していく。
一言でいうと、自己PR。相手への印象付けが大切なのだ。仕事の場でも、魅力的な女性の前でも。
「スズキくんの勤務先って、どこだっけ?」
「リバティパッケージといって、紙袋や紙箱を製造している。あと、段ボールも」
「ふうん、聞いたことないなぁ」
「テレビCMをガンガン流すメーカーじゃないからね。うちの得意先は一般消費者じゃなくて、百貨店量販店や、食品や家電のメーカーさんだから。でも、一部上場なんだよ。四季報でも優良企業って褒められている」
スズキの話に興味がなかったのか、話が長すぎたのか、エリは欠伸をかみ殺したような表情をしていた。どうやら、自己PRの方向性を間違ったらしい。
0
拙作『天使の穴には牙がある【R18】』を読んでいただき、本当にありがとうございます。どうぞ、お気軽に御覧ください。「お気に入り」登録や御感想を聞かせていただければ幸いです。『裸のプリンス【R18】』と『ブラックアイドル【R18】』も合わせて、よろしくお願いいたします。ホラー・ミステリー大賞に参加しますので、合わせてお願いします。
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

ママが呼んでいる
杏樹まじゅ
ホラー
鐘が鳴る。夜が来る。──ママが彼らを呼んでいる。
京都の大学に通う九条マコト(くじょうまこと)と恋人の新田ヒナ(あらたひな)は或る日、所属するオカルトサークルの仲間と、島根にあるという小さな寒村、真理弥村(まりやむら)に向かう。隠れキリシタンの末裔が暮らすというその村には百年前まで、教会に人身御供を捧げていたという伝承があるのだった。その時、教会の鐘が大きな音を立てて鳴り響く。そして二人は目撃する。彼らを待ち受ける、村の「夜」の姿を──。
まばたき怪談
坂本 光陽
ホラー
まばたきをしないうちに読み終えられるかも。そんな短すぎるホラー小説をまとめました。ラスト一行の恐怖。ラスト一行の地獄。ラスト一行で明かされる凄惨な事実。一話140字なので、別名「X(旧ツイッター)・ホラー」。ショートショートよりも短い「まばたき怪談」を公開します。


赤い部屋
ねむたん
ホラー
築五十年以上。これまで何度も買い手がつきかけたが、すべて契約前に白紙になったという。
「……怪現象のせい、か」
契約破棄の理由には、決まって 「不審な現象」 という曖昧な言葉が並んでいた。
地元の人間に聞いても、皆一様に口をつぐむ。
「まぁ、実際に行って確かめてみりゃいいさ」
「そうだな……」

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる